研究実績の概要 |
RSウイルスが誘導するmicroRNAの役割を評価するために,様々な上皮細胞におけるRSウイルス感染系,real-timePCRによるコピー数,ウイルスタイター測定の適正化などを行った.さらにRSウイルスが気道上皮細胞に感染を引き起こすことに伴って誘導される宿主細胞の自然免疫応答を担うシグナル伝達経路に関して検討を行った. hTERT導入ヒト鼻粘膜細胞において,RSV感染によりIL-6, 8, CCL5の産生が誘導され,肺胞上皮細胞株であるA549細胞ではRSV感染によってtype I, III interferon(IFN)-β,-λ1,-2,-3が誘導された.これらのサイトカイン産生はCAM投与によって有意に抑制された.転写因子活性をルシフェラーゼレポーター遺伝子法を用いて検討した。A549にRSV感染を行うと,IFN-β P-125(IFN-βプロモーター領域)とPRD III-I(IRF-3の結合領域の制御下にあるレポーター遺伝子)は活性化され,CAMによって有意な抑制された.そこで,これまで報告のないCAM投与によるIRF-3活性化への抑制効果に焦点をあてて検討を行った.IRF-3はRSV感染にリン酸化を受けるが,CAM処置はこのリン酸化に影響を与えなかった.次にIRF-3の細胞内局在をRSV感染の有無とCAM投与の影響に分けて免疫染色で検討した.RSV感染によりIRF-3の細胞質から核への移行が観察されたが,CAM処置によりIRF-3の核移行が有意に阻害された.さらにIRF-3の二量体形成に関するCAM投与の影響を検討した.RSV感染により二量体形成の誘導が見られたが,CAM処置により二量体形成は抑制された.これらの結果から,CAMはRSVにより誘導されるIRF-3の二量体形を抑制することで,それに伴う核移行を抑制しシグナル伝達経路を止めていることが示唆された.
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