研究実績の概要 |
本研究では,タイト結合分子バインダー(C-CPE, LSR-L)およびmicroRNA(activator, inhibitor)による安全で調節可能なヒト鼻粘膜を介した新規drug delivery systemを確立することを目的とする. タイト結合分子claudinに特異的に結合可能なC-CPEを用いて,正常ヒト鼻粘膜上皮細胞(HNEC)のバリア機能の変化を細胞毒性とともに詳細に解析する.さらに,タイト結合分子および様々なシグナル伝達への影響を検討し,その作用のメカニズムを解析する.1)C-CPE 194およびC-CPE m19で処理し,細胞生存率アッセイを行った.C-CPE 194およびC-CPE m19ともに細胞毒性のない用量で処理し,電気抵抗法で測定を行った所,時間依存的にバリア機能の明らかな低下がみられた.2)HNECにおけるタイト結合分子の発現にC-CPEが影響を与えるか検討した.C-CPE処理によるclaudin-1,4,7及びoccludinの発現の変化は認められなかった.また,局在の変化も認められなかった.3)C-CPEのHNECにおけるMAPKシグナル伝達への影響を検討した.C-CPE処理によりMEK inhibitor であるU0126で阻害可能な,明らかなERK1/2のリン酸化の亢進が認められた.4)インスリンの経鼻投与は,全身の血液循環への移行を伴わずに脳内に直接移行するため,アルツハイマー病の有効な治療法となる可能性が示唆されている.そこでC-CPE処置によるFITC-インスリンのヒト鼻粘膜上皮の透過性の変化を測定した.結果,C-CPEは,対照群と比較して用量依存的に明らかにFITC-インスリンの透過性を亢進させた.また,この透過性の亢進はU0126で阻害可能であった. 以上の結果により,C-CPEは安全で調節可能なヒト鼻粘膜を介した新規drug delivery systemに有用と考えられた.
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