研究課題
平成28年度はまずRac1によるMid1転写制御の程度が、小脳内側と外側で異なっていることを確認した。生後4日目のマウスを用いて小脳内側と外側を別けてウェスタンブロット法を行ったところ、内側の方が明らかにMid1の発現が低下していることが判明した。続いて過去に報告されたMid1 KOマウスにおける小脳前葉形成不全の障害範囲が、我々のDKOマウスより軽微であったことから、Racの下流に存在する新たなシグナル因子を模索した。過去にmTORC1シグナルをダウンレギュレートすることでMid1の機能が抑制されるという報告があったことから、Rac1-Mid1-mTORC1シグナルについて検証した。PC12ラット神経細胞を用いてRac1をノックダウンしたところ、Mid1の発現が低下し、更にmTORC1の標的分子であるS6リボソームと4E-BP1のリン酸化も減少した。同様にDKO小脳組織においても、Mid1とmTORC1関連シグナルの発現低下が確認された。これらの結果から、Rac1がMid1-mTORC1シグナル伝達に関与することが示された。平成29年度は内外側の表現型の違いに対するMid2の関与について検討した。まず内側と外側を別けてqPCRを行ったところ、DKO小脳外側ではMid2の発現量が内側に比し相対的に多いことを発見した。さらに小脳外顆粒層の移植片培養に対してsiMid1, siMid2を添加することによる細胞移動能の変化を確認したところ、siMid1単独投与群とsiMid1+siMid2投与群における移動能低下が認められ、後者においてはsiMid2添加による相乗効果が見出された。これらの結果から、DKO小脳外側ではMid2の発現が相対的に多いことで移動能の低下が代償され、内顆粒層が内側に比べてある程度形成されるのではないかと考えられた。
すべて 2017
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Development
巻: 144 ページ: 1863-1875
10.1242