研究課題/領域番号 |
16K20272
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
岡安 唯 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10596810)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨導超音波 / 骨導超音波語音 / 骨導超音波補聴器 / 超音波聴覚 |
研究実績の概要 |
骨導超音波は通常の補聴器では音の聴取ができないような重度難聴者であっても、その約半分の症例で聴取が可能なことが知られている。さらに骨導超音波を語音信号で変調させることで語音情報の伝達が可能であることから、この骨導超音波の特性を利用した重度難聴者用の補聴器の開発が行われるようになった。現状のシステムでは重度難聴者で約30%の語音正答率が得られているが、十分とは言えず性能の向上が望まれる。変調骨導超音波から語音情報が聴取されるメカニズムは十分には解明されていないため、変調超音波の知覚メカニズムを解明することができれば、変調方式の最適化や語音情報伝達の向上につながると考えられる。変調骨導超音波の知覚メカニズムの解明と重度難聴者に対する骨導超音波補聴器の臨床応用を目的とする。 本年度はDSB-TC方式の変調骨導超音波の知覚メカニズムを調べるために、マスキング負荷が骨導超音波語音の語音明瞭度に与える影響について検討を行なった。変調超音波の知覚メカニズムに復調音が関与しているのであれば、健聴者では超音波以外にも復調音によって語音弁別を行っている可能性があり、マスキング負荷に応じて語音弁別が低下することが考えられる。単音節語音を用いた67-s語音検査で、マスキング負荷量に応じて骨導超音波語音の弁別能が低下することが確認できたことから、変調超音波の知覚メカニズムに復調音が関与していることがわかった。マスキングを用いて、復調音の影響をマスクした状態で、異なる組み合わせの2音節の語音をランダムに呈示し、弁別がしやすい語音と、弁別がしにくい語音についての検討を行ない、骨導超音波語音の異聴の傾向についての検討をすすめている。 H28年度の骨導超音波に関する研究成果の一部を日本聴覚医学会と5th JointMeeting ASA/ASJ(第5回日米音響学会ジョイントミーティング:国際学会)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DSB-TC方式の変調骨導超音波については実験系の構築がほぼ整い、おおむね計画どおりにに進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していた中枢聴覚に関する産総研での脳磁図の検討は、共同研究者の退職に伴い、終了となった。そのため、以前から当科で行っている骨導超音波知覚に関する動物実験を継続しておこなっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
骨導超音波補聴器を改良の為の費用、語音検査装置用のパソコン購入費用を次年度に繰り越したため。脳磁図測定の経費の残高の繰り越し。
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次年度使用額の使用計画 |
骨導超音波補聴器を改良の為の費用、語音検査装置用のパソコン購入費用に充てる。脳磁図測定の経費は動物実験に割り当てる。
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