研究課題/領域番号 |
16K20274
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西山 崇経 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (90627168)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Lats1ノックアウト / 先天性内耳障害 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究では、細胞周期調節経路であるHippo経路を構成するLats1/2キナーゼのうち、Lats1キナーゼはマウスコルチ器 (内外有毛細胞および聴毛) に局在する一方で、Lats2キナーゼはコルチ器に局在しなかった。Lats1ノックアウトマウスの成獣においては、ABRとDPOAEで閾値上昇を認める内耳性難聴を呈し、組織学的には内外有毛細胞の配列不整と聴毛の欠損・不整を認めることが明らかになった。本年度は成獣で認めた表現系の原因解明の為に、有毛細胞の形態維持に関わる蛋白質であるRadixinに対するLats1による影響と、新生マウスにおける組織学的検討を行った。Lats1ノックアウトマウスとコントロールマウス両者間でのRadixinの分布に差は現れず、Lats1ノックアウトによるRadixinへの影響は否定的であった。また、リン酸化Radixin抗体を用いてRadixinリン酸化への影響も解析を行ったが、同様にノックアウトとコントロールに差を認めず、Lats1がRadixinに影響を与えることで難聴を形成する仮説は否定的であった。新生マウスの組織学的解析では、成獣と同様に内外有毛細胞の配列不整と聴毛の欠損・不整を認めた。以上から、Lats1ノックアウトマウスでは先天性の内耳性難聴を伴う可能性が示された。特に聴毛の不正は角度の異常を伴っており、内耳領域で盛んに研究されているPlannar cell polarityへの影響が疑われ、今後解析を行っていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Hippo経路は細胞増殖調節経路であり、その構成因子の欠損による影響は細胞数の障害や細胞脆弱性などが主に起きると予想された。しかし、今年度までの研究結果からは内耳性難聴は先天性である可能性が高いことが判明した。以上の経過から、難聴の原因として細胞死の解析などを当初予定していたが、胎生マウスの内耳発生過程に与える影響に研究方針を変える必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
胎生マウスを用いた内耳発生過程の解析を行う。具体的にはPlannar cell polarity (PCP) の解析として内耳Kinociliumの異常の有無や、PCPに異常を来すGPCRへの影響などの解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予想外の結果を得たことに伴い、追加実験のセットアップや、国際学会での発表などの予定が遅延したため。
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