研究課題
若手研究(B)
Hippo経路は細胞周期調節経路であり、細胞の硬さなどを規定し、発癌との関連も注目されている。その経路を構成するキナーゼのLATS1とLATS2のうち、LATS1のみが内耳有毛細胞に発現していた。LATS1の欠損マウスでは、内耳有毛細胞の配列不整や聴毛の脱落・不整を認め、それに伴う内耳性難聴を呈した。その表現系は新生時期から認められ、kinociliumの乱れも伴っていることから、LATS1が内耳の成熟過程に関与することが示唆された。
耳科・聴覚
今までにHippo経路の構成蛋白の欠損による影響としては、組織の悪性腫瘍化や個体の体格の縮小など、細胞周期調節の異常に伴う変化として説明可能な変化であった。しかし、本研究で得られた表現型においては、先天性かつ持続的な内耳有毛細胞の異常であり、Hippo経路が発生段階に与える影響としての新たな側面が疑われる。また、LATS1が適切な細胞配列と関わる可能性があり、適正な内耳有毛細胞配列を規定する要因を明らかにすることは、内耳の再生や再現といった面でも重要と思われる。