近年、難治性の好酸球性副鼻腔炎の病態形成において、サイトカイン・活性酸素などの上皮障害への増悪因子の関与が提唱されているが、防御因子に関しての研究は少ない。好酸球性副鼻腔炎に伴う鼻茸形成を抑制的に作用すると考えられる抗活性酸素因子であるSuperoxide dismutase(SOD)を検証した。また、SODにはsubtypeがあり、気道上皮では特有の局在を呈するので、subtypeについても同様に検証した。 本研究では多種の副鼻腔炎患者より得た鼻ポリープ組織より、これらの分子細胞生物学的評価を行い副鼻腔炎各症例に対する炎症細胞マーカー(好酸球、好中球、マクロファージなど)の浸潤細胞数、活性酸素の抗酸化物質であるSODの関連性について、以下の項目を検証した。 1. 鼻茸組織中のSOD活性の測定2. 炎症細胞(Eosinophil、Neutorophil elastase、CD68)のカウント3. SODの鼻粘膜上皮陽性率、鼻粘膜の上皮障害率測定4. Laser microdissection で鼻茸上皮採取、RT-PCRによるSODのmRNAの発現量測定 研究の第1段階として、活性酸素との関連における、鼻茸組織中の抗酸化酵素のSOD活性について検証する。活性は非常に不安定なため、組織の保存法、従来の活性測定法を改良した。第2段階として、鼻茸組織中の炎症細胞浸潤の程度を解析するため、免疫染色法を改良し、適切な染色条件を検証する。また、SODが上皮系に局在するため、鼻茸組織中の上皮障害との関連・リモデリングについて検証した。さらに、第3段階として、組織中の好酸球や粘膜の上皮障害との関連についても検証する。第4段階として、鼻茸組織をLaser microdissectionにより鼻茸上皮を採取して、RT-PCRにより鼻茸上皮のSODのmRNA発現を検証する。鼻茸上皮から抽出できるRNAは非常に微量で単位時間で分解が進行するため、効率よくRNA抽出する方法を改良した。
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