頭頸部癌に対する外科的治療は確実な腫瘍摘出と臓器機能温存の両者を達成することが理想であり、低侵襲手術の一つとして経口的内視鏡手術が発展してきた。本研究は腫瘍の可視化により安全域をぎりぎりまで少なくし腫瘍を確実にかつ機能温存も達成することを目 標とした。 現状の内視鏡手術において摘出検体の病理学的評価、安全域の確認を行うと10%程度断端陽性症例が存在する。本研究では腫瘍の可視化を可能にするプローブの開発が重要であり、注目したのはインドシアニングリーンとPET-CTにも応用されている原理である細胞膜グルコース輸送蛋白(GLUT-1)の腫瘍における高度発現による糖代謝の亢進の二つであった。GLUT-1親和性分子プローブとして注目したのは近赤外光をラベルした2-デオキシグルコース(IRDye 800CW 2-DG)でヒト扁平上皮癌株(KB-cell)をヌードマウス口腔粘膜に移植後、蛍光標識抗体(プローブ)であるIRDye 800CW 2-DGを(15nmol/mouse in150μl saline)を静脈注射し切除標本の細胞レベルでのイメージングは蛍光顕微鏡による連続切片の観察により3次元の画像を構成し、細胞レベルの腫瘍の浸潤範囲と蛍光像の範囲の一致性について解析したところ、断端陽性となるものはなく、蛍光像は細胞レベルの腫瘍浸潤範囲に一致するものと考えられる結果が得られた。 実際の臨床へ応用する場合の問題点として浮かび上がったのは、十分な視野が得られにくく、ワーキングスペースの確保が困難であることである。経口的に咽喉頭の複雑な3次元構造を十分に展開できる開口器も開発する必要があり、今後の研究課題として取り組む予定である。
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