研究課題/領域番号 |
16K20280
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
本間 博友 順天堂大学, 医学部, 助教 (90433771)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 副ポリープ / 副鼻腔炎 / 培養系細胞の確立 / サイトカイン / 分泌応答 / 網羅的解析 / 免疫応答プロファイル |
研究実績の概要 |
本研究では好酸球性副鼻腔炎患者および他の副鼻腔炎患者の鼻ポリープ、およびコントロール群として下垂体手術時に採取した正常の蝶形骨洞粘膜組織を検体として用いた。術後短期間で解析できる分離培養系を確立することにより、より個々の患者の生体組織に近いin vitro評価系の確立を目指した。我々の予備検証においては、前述の鼻ポリープ組織より末梢血細胞を除去後、リンパ球を含む浮遊細胞、およびサイトカインの標的となる線維芽細胞を3日ほどで簡便に分離・培養することに成功しており、同手法により得られた線維芽細胞は数回の継代および凍結保存に耐えうることを確認している。同手法を改良し、術後より短期間で安定的に浮遊細胞および線維芽細胞接着培養系が得られる条件を検証し、同一条件下でその後の解析を行うことができる細胞培養系を確立した。 細胞培養系を確立後は浮遊細胞からの細胞分離を簡便かつ効率的に行うことができる免疫磁気ビーズを用いてT細胞を分離後CD4、CD8、IL-23R等の細胞表面抗原の比率をフローサイトメトリーにより解析、さらに浮遊細胞の培養上清由来の分泌サイトカインをBioPlexサスペンションアレイ測定にて網羅的に解析し各病態ごとのプロファイリングによる分類評価を行った。線維芽細胞培養系ではIL-17等の各種サイトカインへの応答能(増殖能・増殖抑制能)を評価しこのプロファイリングにより病態ごとの分類を行った。上記のデータを総合的に評価し、副鼻腔炎の各病態における分子免疫機構の新規分類法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
eatal complexを閉塞する病変と上顎洞に粘膜病変の関連性について我々はこれまでに報告している(Ono, Honma et al. Acta Otolaryngol 2011 131:1193-7)。しかしながら、未だに明確な作用機序は解明されていない。好酸球性副鼻腔炎はTh2ヘルパー細胞の関与が指摘されているが、IgEの上昇は必ずしも伴わず、Th2型反応とは異なる病態が推察されている。このような好酸球性副鼻腔炎や他の副鼻腔炎病態の発症機序を分子レベルで評価・分類するためには免疫エフェクター細胞とサイトカイン標的細胞との相互作用機序に焦点を当てたin vitroでの評価系が確立できた。 さらに、本研究では上記の手法を応用し、より簡便に培養できる線維芽細胞と炎症性細胞に着目して鼻ポリープ摘出後短期間で分子病態を解析できる簡便なin vitro評価法を確立することがほぼ遂行できた。つまり、ⅰ)細胞培養系を確立後は浮遊細胞からの細胞分離を簡便かつ効率的に行うことができる免疫磁気ビーズを用いてT細胞を分離後CD4、CD8、IL-23R等の細胞表面抗原の比率をフローサイトメトリーにより解析、さらに浮遊細胞の培養上清由来の分泌サイトカインをBioPlexサスペンションアレイ測定にて網羅的に解析し各病態ごとのプロファイリングによる分類評価を行う。 ⅱ)線維芽細胞培養系ではIL-17等の各種サイトカインへの応答能(増殖能・増殖抑制能)を評価しこのプロファイリングにより病態ごとの分類を行う。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では副鼻腔炎患者より摘出された鼻ポリープから線維芽細胞を採取し、術後短期間で解析できる簡易細胞培養法を確立、同時に得られた各免疫細胞から分泌するサイトカイン発現パターンやこれに対する線維芽細胞の応答性を解析し、病態ごとにプロファイリングすることにより多様な副鼻腔炎における分子免疫機構の病態評価・分類法を作製するという独創的な研究である。これまでヒト副鼻腔由来細胞の培養系の報告はあるが、安定的に評価するためには一週間以上の期間を要し各患者ごとの同一条件のプロファイリングには適していなかった。短期間で簡便に解析できるin vitro評価系を構築できれば患者の生体組織に類似した環境下での解析が可能となると考えられる。本研究では近年急速に精度が高まっている免疫磁気ビーズやBioPlexサスペンションアレイ等の簡便かつ効率的なアッセイシステムを用いることにより従来より安価で多検体解析に適した評価法を確立できると考えられる。このような評価法を確立し多様な副鼻腔炎の分子免疫応答における免疫エフェクター細胞とサイトカイン標的細胞との相互作用機序を病態ごとに詳細分類できれば、今後の個別化治療の戦略を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席を検討していた学会への参加を、予定が合わず断念した為。
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次年度使用額の使用計画 |
学会出張において、積極的に成果発表を行うため、事前にスケジュール調整を行うと共に残額を消耗品等の購入に使用することで更なる成果を得る。
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