本研究では、より簡便に培養できる線維芽細胞と炎症性細胞に着目して鼻ポリープ摘出後短期間で分子病態を解析できる簡便なin vitro評価法を確立することを目的とした。 本研究では好酸球性副鼻腔炎患者および他の副鼻腔炎患者の鼻ポリープ、およびコントロール群として下垂体手術時に採取した正常の蝶形骨洞粘膜組織を検体として用いることとした。術後短期間で解析できる分離培養系を確立することにより、より個々の患者の生体組織に近いin vitro評価系の確立を目指した。我々の予備検証においては、前述の鼻ポリープ組織より末梢血細胞を除去後、リンパ球を含む浮遊細胞、およびサイトカインの標的となる線維芽細胞を3日ほどで簡便に分離・培養することに成功しており、同手法により得られた線維芽細胞は数回の継代および凍結保存に耐えうることを確認してした。同手法を改良し、術後より短期間で安定的に浮遊細胞および線維芽細胞接着培養系が得られる条件を検証し、同一条件下でその後の解析を行うことができる細胞培養系を確立する。 ⅰ)細胞培養系を確立後は浮遊細胞からの細胞分離を簡便かつ効率的に行うことができる免疫磁気ビーズを用いてT細胞を分離後CD4、CD8、IL-23R等の細胞表面抗原の比率をフローサイトメトリーにより解析、さらに浮遊細胞の培養上清由来の分泌サイトカインをBioPlexサスペンションアレイ測定にて網羅的に解析し各病態ごとのプロファイリングによる分類評価を行った。ⅱ)線維芽細胞培養系ではIL-17等の各種サイトカインへの応答能(増殖能・増殖抑制能)を評価しこのプロファイリングにより病態ごとの分類を行った。ⅲ)上記のデータを総合的に評価し、副鼻腔炎の各病態における分子免疫機構の新規分類法を確立した。
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