本研究の目的は、いまだ病態に不明な点が多い好酸球性副鼻腔炎の鼻副鼻腔粘膜における好酸球浸潤に至る機序を自然免疫と獲得免疫の両面から解析を行うことで、好酸球性副鼻腔炎の病態解明と新規治療法の開発を目指すものである。鼻茸・副鼻腔粘膜、副鼻腔貯留液などの検体の採取目的に、慢性副鼻腔炎患者を対象に症例登録を行い、また対照症例として眼窩底骨 折整復術・下垂体手術施行症例を登録した。88症例の登録を行い、臨床検査項目として、自覚症状:自記式アンケート調査(7-scal e Linkert scale)、副鼻腔CT見:Lund-Mackay scoring systemを用いて0-24 にスコア化、鼻ポリープの評価:内視鏡下に観察を行い、0-4 にスコア化、血液検査所見:血中好酸球数、好塩基球、血清総 IgE 値、各種抗原特異的 IgE 値を測定し評価した。ホルマリン固定し、HE染色した鼻茸・副鼻腔粘膜組織の好酸球をカウントし、さらに好中球、好塩基球、マクロファージ等の浸潤細胞 については免疫染色し、細胞カウント、統計学的評価を行った。登録した症例を好酸球性副鼻腔炎、非好酸球性副鼻腔炎、コントロール群に分け比較検討し、データ解析した。その結果、本研究課題の成果として、ADAMDEC1は正常状態では他臓器と同様に鼻には発現はないが、鼻茸を伴う非好酸球性副鼻腔炎や喘息非合併の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎で発現が高く、またADAMDEC1はCD68陽性細胞であるマクロファージに発現していることが明らかになった。
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