口腔粘膜組織から移植用培養粘膜上皮を作製し、傷害声帯へ移植を行ったのち、移植片の安定した生着性について検討した。 作製した培養粘膜上皮の検証:作製した培養粘膜上皮は、HE染色で2~4層の細胞からなる重層構造であり、免疫組織化学ではサイトケラチンが陽性で、ビメンチンが陰性であった。feeder cellである3T3細胞の混在がない重層上皮であることを確認した。声帯膜様部遊離縁の正常声帯粘膜上皮と比べ、細胞層数は少ないながらも、形態的および組織学的に類似していた。 傷害声帯の作製:片側声帯膜様部の声帯筋表層まで切除し、6ヶ月後に移植を行うための傷害声帯モデル(瘢痕声帯)を作製した。組織学的検討ではElastica van Gieson stain 染色では弾性線維が減少し膠原線維が増加していた。またアルシャンブルー染色でヒアルロン酸の減少を認めた。吹鳴実験においてストロボスコピーで声帯振動、粘膜波動の減弱を認めた。 培養粘膜上皮の経口的移植:全身麻酔下に直達鏡を挿入し、作製した傷害声帯モデルの瘢痕声帯を声帯筋層表層で切除した。Up Cellを用い培養粘膜上皮を培養皿より取り出し、Up Cellごと鉗子で把持し、顕微鏡下に瘢痕切除部に押し付け移植した。移植直後には声帯表面は平滑になり培養上皮が移植できたことを確認した。 移植後の生着性、経時的変化の観察:移植1週間後、1ヶ月、3ヶ月後に喉頭内視鏡で観察した。1週間後には切除境界は不明瞭になり、移植3か月後には声帯形は正常声帯とほぼ同様に保たれていた。
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