生後1日目のマウスラセン神経節を酵素で単細胞化して、in vitroでの培養に成功した。ラセン神経節には神経細胞、非神経細胞が含まれるが、非神経細胞はさらに、グリア細胞と非グリア細胞に分類される。Sox2-GFPマウスを用いて、ラセン神経節をSox2陽性グリア細胞と、Sox2陰性グリア細胞にFACSでソートした。グリア細胞と非グリア細胞の神経細胞へ分化転換する能力(competence)を転写因子Ascl1を強制発現させて、比較した。結果、グリア細胞から神経細胞への分化誘導効率が有意に高かった。また、神経細胞は、ラセン神経節細胞に発現する、Prox1やVglut1を発現した。さらに、野生型の成獣マウスラセン神経節細胞を単細胞化し、ラセン神経節内のグリア細胞の培養に成功した。継代により骨組織を除去し、培養皿はMatrigelでコートすることで比較的均一なグリア細胞を死滅させずに培養できた。また、酵素で単細胞化しないラセン神経節を器官培養し、神経突起の伸張や、グリア細胞の生存を確認した。成果は、Front Neurosci誌に論文発表した。 昨年度、マウスラセン神経節細胞の障害モデルを、Na-K-ATPase阻害剤のウアバイン内耳局所投与により作製したが、同モデルの前庭神経節細胞を免疫組織化学的に解析した。前庭神経節内の神経細胞にはNa-K-ATPase陽性細胞とNa-K-ATPase陰性細胞が存在することが判明し、機能的な相関が示唆された。 また、マウスラセン神経節細胞の障害モデルはローリングの行動異常を呈するために、前庭眼反射を測定して前庭機能を評価した。ウアバイン投与側で、コントロール群と比べてVOR gainが低下していた。本成果は、2019年2月米国ボルチモアで開催された第42回基礎耳鼻咽喉科学会で発表した。
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