研究課題
抗ANG2抗体を用いた眼炎症抑制効果を検討するにあたり、まず眼炎症の抑制に寄与し得る抗体の至適投与量について検討した。この検討には、エンドトキシン誘導ぶどう膜炎(EIU)マウスを用いた。6 週齢のC57BL/6 マウスを用い、抗ANG2抗体を用いた治療群では10mg/kgまで投与量を変化させ、眼炎症抑制効果の変化を検討した。抗体の腹腔内投与から24時間後にリポポリサッカライド(LPS)を腹腔内注射し、EIU を誘導した。さらに24時間後に過剰量の麻酔薬投与下で、左心室よりコンカナバリンAで灌流し、眼球を摘出し、網膜フラットマウントを作製した。網膜白血接着数を検討したところ、治療群(抗ANG2抗体投与量:10mg/kg)において非治療群と比べて有意に減少した。この結果から、眼炎症抑制に要する抗ANG2抗体の至適投与量を10mg/kgと推定できた。今後はこの投与量を目安としてEAUに対する眼炎症の抑制効果を検討する。また上記の実験とともに、実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)マウスを作製し、眼病理組織標本を作製した。C57BL/6 マウスにヒト視細胞間レチノイド結合蛋白(IRBP)由来合成ペプチドと結核菌強化完全フロインドアジュバントエマルジョンで皮下免疫し、追加免疫として百日咳菌毒素を0.1μg腹腔内投与してEAU を惹起した。重症度が最も高くなる21日目にマウスを安楽死させ、眼球を摘出して眼病理組織標本を作製した。今後これを用いてマウスEAU網膜におけるAng1、およびAng2の局在を免疫組織化学的に検討する。これまでの研究で、眼炎症抑制に寄与しうる抗ANG2抗体の投与量を検証できた。これらの結果に基づき、EAUマウスモデルでの治療効果の検討、網膜組織の免疫染色などを行い、さらなる解析を行っていく。
3: やや遅れている
EAUマウスモデルの作成については順調に行っている。中和抗体を用いた炎症抑制効果の検討についてはやや遅れがある。現在、抗体の提供先から抗体が十分に得られていないため、出来うる範囲での見当を行っている。抗体量が十分量確保出来次第、EAUマウスに関する眼炎症抑制効果について見当をさらに進めていく予定である。
基本的な抗体の至適投与量についての見当がついた。実験的自己免疫性ぶどう膜炎の動物モデルの作製に関する手技は確立しており、免疫組織化学的な変化を検討するための病理組織標本はすでに作製している。現在、抗体の提供先から抗体が十分に得られていないため、出来うる範囲での見当を行っている。抗体量が十分量確保出来次第、EAUマウスに関する眼炎症抑制効果について見当をさらに進めていく予定である。具体的にはEAUの病理組織学的重症度の検討を行う。また、抗体投与により重症度の軽症化が確認された場合、その分子メカニズムについての解析を行う。抗Ang2中和抗体による抗炎症作用の分子機構を検索するため、摘出眼球を抗NF-κB抗体で免疫染色を行う。NF-κB p65の核内への移行を検討し、ぶどう膜炎による網膜ぶどう膜の障害とNF-κBの関与について評価する。さらにIκB-αの発現変化についてもwestern blottingを用いて評価する。EAUマウスの網膜及び脈絡膜における炎症関連分子 p-selection、VCAM-1、ICAM-1、TNF-α、IFN-γ、IL-6、MCP-1 などの発現変化をreal-time PCR、western blotting、ELISA を用いて検討することを予定している。
平成28年度に行う予定の検討において、EAUの重症度を評価するために必要な十分な量の各種抗体を確保できない状況にあったことが主な要因となった。これにより、予定より計画の進行はやや遅れているため、それとともに使用額も現時点では少なくなっている。
必要な抗体が確保され次第、速やかにEAUの組織学的重症度、分子メカニズムの解析を詳細に進める。EAUの病理組織学的重症度の検討を行う。また、抗体投与により重症度の軽症化が確認された場合、その分子メカニズムについての解析を行う。抗Ang2中和抗体による抗炎症作用の分子機構を検索するため、摘出眼球を抗NF-κB抗体で免疫染色を行う。NF-κB p65の核内への移行を検討し、ぶどう膜炎による網膜ぶどう膜の障害とNF-κBの関与について評価する。さらにIκB-αの発現変化についてもwestern blottingを用いて評価する。EAUマウスの網膜及び脈絡膜における炎症関連分子 p-selection、VCAM-1、ICAM-1、TNF-α、IFN-γ、IL-6、MCP-1 などの発現変化をreal-time PCR、western blotting、ELISA を用いて検討することを予定している。これらの検討に使用する予定である。
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