研究課題
アンジオポエチン(Ang)は、血管成熟化、安定化、血管網の再構築などに重要な役割を果たしている。Ang1とAng2は拮抗して作用し、Ang1は血管壁の安定化、Ang2は血管壁の不安定化に関与する。またAng2はIKK シグナルを介して血管内皮細胞の炎症反応制御因子として機能することが知られているが、眼炎症疾患におけるAngシグナルの関与は不明である。本研究では炎症性眼疾患の動物モデルを用いて治療標的としてAng2阻害による炎症性眼疾患の軽症化について検討した。ヒト難治性内因性ぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を用いて、Ang2阻害薬の治療効果を臨床的重症度の推移ならびに組織学的重症度について検討した。6 週齢のC57BL/6 マウスにEAUを誘導した。抗Ang2抗体の投与はEAU誘導24時間前とEAU誘導から7日目に10mg/kg/回を腹腔内注射した。その後投与日を変更した別の検討も行ったが抗体投与群、非投与群に有意な差はみられなかった。一方で、EIUマウスモデルを用いた検討では抗Ang2抗体と抗VEGF抗体を併用することにより前房水中で白血球の浸潤は減少した。さらに抗NF-κB抗体を用いた免疫染色ではp65の核内への移行が治療群で減少しており、治療効果の要因の一つとしてNF-κBを介した経路が関与していることが考えられた。今回のプロトコールを用いた抗Ang2抗体による単独治療では、EAUマウスにおいて臨床的重症度ならびに組織学的重症度の有意な改善はみられなかった。しかしながら、抗Ang2抗体による治療についてはその投与量、投与間隔、そして他の薬剤との組み合わせをさらに検討することでEIU同様にEAUにおいても有意な治療効果が得られる可能性があると考えられ、ひいては将来的な臨床応用につながることも期待できる薬剤と考えられた。
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Am J Ophthalmol Case Rep
巻: 10 ページ: 189-191
10.1016/j.ajoc.2018.01.025.