平行平板型流れ負荷装置を用いた水流シェアストレスによって培養角膜上皮細胞に定量的に長時間にわたって機械的刺激を負荷し、細胞表面のマイクロビライを走査型電子顕微鏡で観察したが、細胞間かつ細胞内の部位による不均一性のため、定量的な評価は困難であった。機械的負荷後の角膜上皮細胞の網羅的遺伝子解析を行ったところ、2016年に発表したTGF-βのシグナル伝達経路以外にもさまざまな遺伝子発現が変化しており、中でもANGPTL4(アンギオポエチン様蛋白4)の遺伝子発現が圧倒的に上昇していた。ANGPTL4は蛋白レベルでも有意な増加が認められた。正常マウス角膜の免疫染色においても角膜上皮細胞にANGPTL4が高発現しており、ANGPTL4は角膜上皮において何らかの機能を持っている蛋白であることが示唆された。しかし、現在のところ、角膜上皮細胞においてANGPTL4がどのような役割を担っているかは不明である。 そこで、我々は生体において角膜上皮に機械的刺激を負荷してANGPTL4の発現変化を検討する方針とし、角膜上皮に機械的刺激を負荷するモデルとしてドライアイモデルマウスを用いることとした。マウスを筒状の閉鎖環境に入れ、乾燥環境で送風し、強制的にドライアイにするモデルである。除湿器や送風機を購入、マウスを入れる装置なども作成し、実際にマウスを用いて角膜上皮障害が生じ、ドライアイモデルが出来ていることが確認出来ている。現在、ドライアイモデルマウスにおけるANGPTL4の遺伝子発現変化や蛋白変化を解析中である。
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