研究実績の概要 |
本研究では、培養細胞、器官培養網膜および緑内障モデルマウスを用いて、神経節細胞死に対するミトコンドリアμ-カルパイン阻害ペプチド(Tat-μCL)の効果を総合的に評価することを目的とする。具体的には以下の3項目を計画している。1) マウス神経節細胞由来RGC-5において本ペプチドの効果を評価 (in vitro解析);2) 網膜器官培養法において本ペプチドの神経保護効果を評価 (ex vivo解析);3) 緑内障モデルマウスを用いて、本ペプチドの神経保護効果を評価 (in vivo解析)。 当該年度は、実験項目2のex vivo解析を中心に実施した。初めに網膜を用いた器官培養法の条件検討を行った。培地に網膜を入れ、37℃, 5% CO2インキュベーター内で培養を行った。培養後はパラホルムアルデヒド固定、エクセルシア処理、パラフィン包埋を行い、ミクロトームを用いて3 μmの網膜切片を作製した。網膜構造の評価にはHE染色、アポトーシスの検出のためTUNEL染色を行った。また網膜細胞の障害を評価するために免疫組織染色を行い、ロドプシン (桿体視細胞) 、オプシン (錐体視細胞) 、網膜神経節細胞、ミューラー細胞、活性型ミューラー細胞、双極細胞ならびにアストロサイトの変化を観察した。次に培地中にN-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA ; 100 μM, 200 μM) を添加し、網膜内層(双極細胞ならびに網膜神経節細胞)にアポトーシスを誘導しようと試みた。培養24時間まではアポトーシスが検出されず網膜層も大きな乱れはなかったが、タンパク質の局在異常や細胞の減少、GFAPの発現が見受けられた。NMDAを添加したところ、培養12時間では網膜内層に特異的にアポトーシスを誘導することが確認された。現在は、NMDA誘導神経節細胞死に対してTat-μCLが保護効果を示すのかを評価している。
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