研究課題/領域番号 |
16K20304
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
細貝 真弓 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (20760177)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | サイトメガロウイルス / 角膜内皮炎 / 眼感染症 / ぶどう膜炎 / 次世代シーケンス / 器官培養 / PCR / 遺伝子型 |
研究実績の概要 |
1. サイトメガロウイルス(CMV)角膜内皮炎のex vivo感染モデルの確立 ヒトCMV(HCMV)が器官培養したヒト角膜内皮細胞(HCEC)で増殖できるのかを検討するために、研究用ヒト角膜(米国アイバンクSight Life)を器官培養し、初代培養HCECを用いた感染実験(Hosogai M et.al.,Br J Ophthalmol. 2015)で効率よく増殖したHCMV TB40/E株とTowne株およびFIX株を角膜内皮側に接種した。分離した角膜上皮、実質、内皮それぞれの組織におけるHCMVのRNA・蛋白の発現、ゲノム複製、培地のウイルス感染価を経時的に解析し、HCMV感染後の全層角膜を病理組織学的(抗CMV免疫染色と蛍光in situハイブリダイゼーション)に検討した結果、3株全てHCECで増殖し、水平方向に加え角膜実質への垂直方向への感染拡大が明らかとなった。 2. CMV眼感染症におけるCMV遺伝子型の解析 CMVの遺伝子型と臨床病型との違いに関連はあるのか検討することを目的に、眼内液から抽出した微量なDNAを用いて、各次世代シーケンサーで解析可能なライブラリー作製法を検討した。CMV網膜炎、CMV虹彩炎、CMV角膜内皮炎の前房水、硝子体液由来DNA(DNA量は0.27~20.00ng, CMVコピー数は4.2×102~1.0×107コピー/ml)からOvation SP+ Ultralow DR Multiplex System 1-8キット(タカラバイオ)でシーケンスライブラリを作製し、イルミナ社Mi SeqでDNA量0.27ngのサンプル以外からシーケンスデータが得られた。リファレンスゲノム(HCMV Merlin株, GenBank:AY446894)へのマップ率は0.01%~0.06%と低値で、CMV-DNAを特異的に増幅する必要性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CMV角膜内皮炎の器官培養感染モデルの確立は、おおむね順調に進展している。一方、CMV眼感染症の前房水や硝子体液から抽出されたDNAを用いた次世代シーケンスの結果、当初想定していたようにヒトゲノムの解析データが多くを占め、目的のCMVの解析データが少なかったため、CMV全ゲノムをロングPCRで特異的に増幅することを試みている。プライマーの設計、増幅条件の検討に時間を要している。
|
今後の研究の推進方策 |
CMVゲノム全領域を6~10kb程度の30~40アンプリコン程度に分けてPCRで増幅して、全領域がカバーできるか試みる。増幅産物が目標数に達した後、Mi Seqでまとめてシーケンスをする。得られたCMV遺伝子配列の情報から、CMVの細胞への感染に必要なウイルス遺伝子を中心にCMV遺伝子型の解析を行う。 臨床病型(角膜内皮炎か網膜炎か)とHCMV遺伝子型との関連および 初代培養HCECおよび器官培養した角膜の感染実験で用いたTB40/E株、Towne株、FIX株の遺伝子型との相同性を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前房水や硝子体液から得られるDNA量は少なく、CMV-DNAの増幅および遺伝子配列解析が困難で時間を要したため、目標数の検体の解析に至らず、これらに必要な使用額を次年度へ持ち越しとした。
|
次年度使用額の使用計画 |
PCR試薬、DNA精製キット、次世代シーケンスライブラリ作製キットの購入に使用する予定である。
|