研究課題
今年度は眼瞼下垂手術前後のヒトの瞼板およびマイボーム腺形態について観察を行った。眼瞼下垂症に対する挙筋腱膜縫着術では縫合糸が瞼板内に恒久的に留置されるが瞼板やマイボーム腺に対する影響はわかっていない。眼瞼下垂症に対する挙筋腱膜縫着術の眼瞼およびマイボーム腺に対する影響について調査した。眼瞼下垂症手術を受けた31例47眼(男性 5例、女性26例、平均年齢74.3歳±9.0歳)に対して、術前の挙筋機能(mm)、術前、術後6か月の瞳孔上眼瞼距離MRD (mm)、瞼裂高(mm)、上下マイボスコアおよび術後6か月での上眼瞼翻転の可・不可および翻転時の瞼板形態を記録した。結果は、術前の挙筋機能は平均10.9㎜と保たれており、術前と術後6か月を比較するとMRD、瞼裂高は有意に増加した。術後19%が上眼瞼翻転不可になり、術後55%が上眼瞼翻転時に瞼板のひきつれを生じた。マイボグラフィー撮影できた上眼瞼36眼では術前後でマイボスコアに変化を認めなかった。以上より眼瞼下垂症手術で瞼板に通糸を行ってもマイボーム腺の形態変化は起きない可能性が示唆された。また術後上眼瞼の翻転が不可能になる症例があり、注意を要することが分かった(日本眼科学会総会2018年、ARVO2018)。また、緑内障手術後濾過胞を有する眼に対する眼瞼下垂症手術についての安全性、有効性についても検討した。18名19眼を観察し、眼瞼下垂症手術後に有意にMRD、瞼裂高が改善し、術後眼圧上昇を認めず、濾過胞関連の合併症も認めなかったことより、安全性、有効性が確認された(日本眼科学会総会2018年、ARVO2018)。
3: やや遅れている
人に対する観察研究は順調であるが、動物実験については動物管理の時間的問題で施行できていないため。
学会発表内容を論文にし2本投稿予定である。また、症例数を増やし術前後の眼表面面積の増加に伴う眼表面状態の変化について検討し、眼瞼下垂に対する手術治療の最適化の指標の構築を目指す。手術件数、マンパワーが順調に増えており効率的なデータ収集が見込まれる。動物実験については必要性とデザイン、実施可能性について再度検討が必要である。
平成29年度は国際学会への参加がなかったため旅費が少なかった。平成30年度には国際学会参加と論文校正、掲載料などが発生する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
Ocul Surf.
巻: Oct;15(4) ページ: 713-722
10.1016/j.jtos.2017.04.003.
Clin Ophthalmol.
巻: May 30;11 ページ: 1031-1038
10.2147/OPTH.S133060.
医学のあゆみ
巻: 262巻10号 ページ: 990-993
眼科手術
巻: 30巻2号 ページ: 229-233
OCULISTA
巻: 46号 ページ: 44-48