最終年度は視機能に密接に関わり臨床的関心の高い、眼瞼下垂症に対する手術前後の角膜形状の変化について観察研究を行った。 挙筋腱膜縫着術を施行し術後6ヶ月まで角膜形状解析を行った32例32眼(男性8名、女性24名、平均年齢72.6±8.5歳)を対象とし、術前後の矯正視力(logMAR)、等価球面度数(D)、中心角膜厚(μm)、AverageK(D)、角膜乱視量(D)、角膜中心3mmにおける前後面の角膜形状解析(フーリエ解析)の乱視成分(D)を比較した。 術前と比較し術後6ヶ月の矯正視力、等価球面度数、中心角膜厚は有意な変化を認めなかった。術前、術後6ヶ月の角膜前面でのAverageK(順に49.40±1.09、46.47±2.61)、角膜前面での角膜乱視量(1.18±0.60、-0.02±1.35)、角膜後面での角膜乱視量(0.60±0.78、-0.01±0.45)は有意に減少し(いずれもp<0.001)、フーリエ解析では術前、術後6ヶ月で前面の球面成分が有意に減少(49.60±1.57、46.41±2.54 、p<0.001)しており、角膜後面では有意な変化は認めなかった。 本研究から、眼瞼下垂症手術後6ヶ月において角膜は平坦化し、角膜乱視は前後面で減少し、フーリエ解析では角膜前面の球面成分が減少することが分かった。このことから、眼瞼下垂症手術後に白内障手術を行う際は、経時的な角膜乱視の変化を観察したうえで慎重に手術時期を検討する必要があると考えられた。特にトーリック眼内レンズを使用する場合には細心の注意が必要である。(臨床眼科学会2019で発表し学術展示優秀賞受賞、CORNEAに論文掲載(accecpted)予定)
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