研究課題
水疱性角膜症は角膜内皮細胞の機能不全により生じる疾患で失明原因となりうる。現在有効な治療は角膜移植のみである。角膜移植は非常に有用である反面、ドナー不足は常に深刻な問題となっている。本研究の目的は角膜移植に代替する、再生医療を用いた新しい水疱性角膜症の治療法を探索することである。具体的には、人工角膜内皮グラフトを用いた移植法の開発を主体とし、それに伴う角膜内皮細胞培養法の改善、評価を行っていく。平成28年度に実施されたウサギ角膜を用いた人工角膜内皮グラフトの効果実験の結果は査読付雑誌に受理され、公表された。ヒト角膜内皮細胞は生体内では分裂能はなく、培養し増殖させるのは非常に難しい。人工角膜内皮グラフトには角膜内皮細胞の形態や機能を維持したまま培養増殖させる必要があるが、現在の培養法では継代するにしたがって線維芽細胞様変化をおこし、本来の角膜内皮細胞としての形態が保たれなくなる現象が観察された。そのため既報にあったような細胞培養液への添加剤としてROCK 阻害剤やTGFβ阻害剤を導入したが、目に見える細胞形態の改善はみられなかった。そこで方針を転換し角膜内皮細胞の機能改善および老化防止に着目するに至った。角膜内皮細胞の細胞質はミトコンドリアが豊富で小胞体もよく発達していて、この細胞が多大なエネルギーを利用しつつ活発な活動を行っていることが分かっている。そこでヒト角膜内皮細胞に対し、小胞体ストレスをレスキューすることで細胞形態や培養効率が改善するという仮説の下、小胞体ストレスが細胞形態にどのようにかかわっているか観察する実験を行った。この結果に関しては今後学会発表予定である。
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