研究課題/領域番号 |
16K20315
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中西 秀雄 京都大学, 医学研究科, 助教 (80724278)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 近視性脈絡膜新生血管 / 強度近視 / 脈絡膜 / 遺伝子多型 / 全ゲノム関連解析 |
研究実績の概要 |
強度近視は様々な眼疾患の危険因子であり、近視性脈絡膜新生血管は早期から中心視野障害・視力低下を伴う、強度近視関連眼合併症の代表である。強度近視発症に関連する遺伝因子が明らかになりつつある一方で、近視に伴う脈絡膜変化や近視性脈絡膜新生血管の発症・病巣拡大に関連する遺伝的因子は明らかになっていない。全ゲノム領域を対象として、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism)やコピー数多型(Copy Number Variant)をマーカーとして用いる関連解析(全ゲノム関連解析)というゲノム学的研究手技は、強度近視関連脈絡膜病変の発症や予後に関与する遺伝子・分子を明らかにしうる。 平成28年度は、ゲノム学的研究参加の同意を得て末梢血採取を行った症例について、近視性脈絡膜変化所見の有無・程度評価、脈絡膜厚評価、近視性脈絡膜新生血管有無の評価などの臨床情報収集を後ろ向きに行い、本研究に適したサンプル選定を行うとともに、順次末梢血からのDNA抽出とDNAチップを用いた全ゲノム領域の遺伝子型決定を行った。今年度新規取得および取得済の全ゲノム領域遺伝子型情報を用いて、眼軸長26mm以上の強度近視症例736例と、眼軸長25mm以下の非強度近視1855例で、全ゲノム領域におけるコピー数多型頻度の比較検討を行った。網膜における遺伝子の発現有無なども考慮した結果、7か所の遺伝子領域における配列重複あるいは欠失が、強度近視の有無と関連することが示唆された。これら領域のコピー数多型のうち一部は同時に、近視性脈絡膜新生血管の発症とも有意に関連していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム学的研究参加の同意を得て末梢血採取を行った症例について、近視性脈絡膜変化所見の有無・程度評価、脈絡膜厚評価、近視性脈絡膜新生血管有無の評価などの臨床情報収集は、予定通り進行した。新規症例についての全ゲノム領域の遺伝子型決定も、概ね予定通り進行している。得られた遺伝子型を用いた全ゲノム領域関連解析により、強度近視および近視性脈絡膜新生血管発症への関連が示唆される遺伝子領域の同定まで、概ね予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の検討で強度近視および近視性脈絡膜新生血管発症との関連が示唆された遺伝子領域について、別のサンプルセットを用いた再現性確認を進める。これらの遺伝子領域が、平成28年度に評価を行った近視性脈絡膜変化所見の有無・程度、脈絡膜厚、近視性脈絡膜新生血管の病巣径とも関連するか否かを評価するともに、これらの表現型と関連する他の遺伝子領域が無いか、並行して探索を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度はゲノム学的研究参加の同意を得て末梢血採取を行った症例について、近視性脈絡膜変化所見の有無・程度評価、脈絡膜厚評価、近視性脈絡膜新生血管有無の評価などの臨床情報収集をまず行い、検討に用いるサンプル選定を行った。その後に、選定された新規サンプルのDNA抽出とDNAチップを用いた全ゲノム領域の遺伝子型決定を行った。概ね予定通りの進捗状況であるが、一部のサンプルの本作業を平成29年早期に行うこととなったため、これにあてる物品費や人件費などを次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した次年度使用額を用いて、DNA抽出用の実験消耗品や全ゲノム領域遺伝子型決定用のDNAチップおよび消耗品の購入、人件費支払いを行い、平成29年度早期に本作業を完了する。以後は予定通り、得られた結果の再現性確認用サンプルのDNA抽出・全ゲノム領域遺伝子型決定作業を進め、並行して他の表現型と関連する遺伝子領域探索のための統計学的検討を進める。
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