研究課題
強度近視は様々な眼疾患の危険因子であり、近視性脈絡膜新生血管は早期から中心視野障害・視力低下を伴う、強度近視関連眼合併症の代表である。強度近視に伴う脈絡膜変化や近視性脈絡膜新生血管の発症に関連する遺伝的因子は明らかになっていない。全ゲノム領域を対象として、一塩基多型やコピー数多型をマーカーとして用いる関連解析(全ゲノム関連解析)というゲノム学的研究手技は、強度近視関連脈絡膜病変の発症や予後に関与する遺伝子・分子を明らかにしうる。平成28年度は、ゲノム学的研究参加の同意を得て末梢血採取を行った症例について、近視性脈絡膜変化所見の有無・程度評価、脈絡膜厚評価、近視性脈絡膜新生血管有無の評価などの臨床情報収集を後ろ向きに行った。これをもとに眼軸長26mm以上の強度近視症例736例と、眼軸長25mm以下の非強度近視1855例で、全ゲノム領域におけるコピー数多型頻度の比較検討を行い、網膜における遺伝子発現有無なども考慮した結果、EPHA3やHCN1を含む7か所の遺伝子領域が強度近視の有無と有意に関連し、これらの領域のコピー数多型は近視性脈絡膜新生血管の発症とも関連していた。平成29年度は、近視性脈絡膜新生血管の前段階である近視性黄斑症について着目し、まず大規模コホート研究参加者の眼底写真をもとに近視性黄斑症の病期分類を行い、各病期の有病率を明らかにし報告した。次に、ゲノム学的検討により、網脈絡膜組織の萎縮と菲薄化を引き起こす候補遺伝子の1つとしてCCDC102Bを特定した。次に、日本人強度近視症例および海外施設強度近視症例の臨床情報およびDNA試料を用いて、CCDC102B遺伝子について再現性検討を行ったところ、日本人と中国人の強度近視症例における黄斑症と有意な関連を認め、これを報告した。今後は、上記遺伝子と近視性脈絡膜新生血管発症との関連を検討するとともに、近視性黄斑症の発症に関連するメカニズムの検討を進める予定である。
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Nature Communications
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