研究課題/領域番号 |
16K20317
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
若林 卓 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (20733116)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血管新生 / 血管再生 / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症や加齢黄斑変性症は中途失明に関わる疾患であり、その発症および進行には虚血および病的血管新生が密接に関連することが知られている。本研究では、既存血管に存在して血管新生に中心的な役割を果たす特殊な血管内皮細胞を同定し、血管新生との関連を解明することにより、血管新生を制御する新規治療法の開発を目指すことを目的としている。我々は、これまでの研究において、フローサイトメトリーおよび蛍光モノクローナル抗体を用いた精度の高い血管内皮細胞単離法を確立し、さらにDNA結合色素Hoechstを用いたSide population(SP)法を行い、血管新生の際に中心的な役割を果たす可能性のある潜在的増殖活性の高い血管内皮細胞として血管内皮SP細胞を同定してきた(EMBO J 2012, IOVS 2013)。さらにDNAマイクロアレイを用いてマウス血管内皮SP細胞に特異的に発現する遺伝子Xを同定した。 平成28年度の研究では、血管内皮SP細胞が生体内で実際に血管新生に貢献するかにつき検証するため、、SP細胞に最も特異性が高い特定のX遺伝子座に対して、CreERT2コンストラクトを直接ノックインしたマウスを作製した。具体的には、ターゲティングベクターを作成しES細胞へ導入した。相同組換えES細胞から3ラインのキメラマウスを得た。さらにキメラマウスを野生型マウスと交配することで、生殖系列(ジャームライン)へ移行した目的の遺伝子改変マウスを得た。今後レポーターマウスと交配することでin vivoにおいて血管内皮SP細胞特異的分子をEGFPで標識することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管新生に中心的な役割を果たす血管内皮SP細胞に最も特異性が高い特定のX遺伝子座に対して、CreERT2コンストラクトを直接ノックインしたマウスを作製できた。今後、レポーターマウスと交配することでマウス生体内において血管内皮SP細胞特異的分子をEGFPで標識することを目指すことができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として、血管内皮SP細胞に最も特異性が高い特定のX遺伝子座に対して、CreERT2コンストラクトを直接ノックインしたマウスと、レポーターマウスとを交配することでマウス生体内において血管内皮SP細胞特異的分子をEGFPで標識することを目指す。タモキシフェン投与によりEGFPで標識された血管内皮細胞が生体内で実際に存在するか、存在した場合生体内の血管のどのような部位にどのような細胞と隣接して存在するかなどにつき詳細に検討する。抗体染色で認識できた血管内皮SP細胞の局在と作製したマウスにおける血管内皮SP細胞の局在が完全に一致するかについても検討する。網膜血管、脈絡膜血管で経時的な局在の検討を行う。次にタモキシフェン投与により血管内皮SP細胞特異的分子XをEGFPで標識した状態で血管新生を誘導し、EGFP陽性の血管内皮細胞の運命追跡(系譜解析)を行い、新たに構築される血管がEGFP陽性細胞から発生するかにつき検討を行う。種々の血管新生誘導モデルを作製する。マウス眼における病的血管新生モデルとして高酸素負荷網膜血管新生モデルおよびレーザーによる実験的脈絡膜新生血管モデルを作製する。また眼以外の生理的な血管新生を誘導するモデルとして、皮膚創傷治癒モデル、肝臓部分切除による肝再生モデルを作製する。新たに構築された新生血管がすべてEGFP陽性となれば、EGFP陽性の特異的な血管内皮細胞が血管新生に中心的な役割を果たすことが実証される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、血管新生に中心的な役割を果たす血管内皮SP細胞に最も特異性が高い特定のX遺伝子座に対して、CreERT2コンストラクトを直接ノックインしたマウスを作製することができたが、平成28年度の研究では、このマウスを用いてマウス生体内の血管内皮SP細胞の局在を確認するまでには至らず、研究遂行の予定にやや遅れが生じた。ただし、平成29年度にはマウスを用いた血管新生の新たなメカニズム解明や共同研究者との研究予定も進んでいる。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞培養や免疫組織学的実験に用いる抗体、試薬等の消耗品、遺伝子改変マウスの維持に使用する予定である。また、研究成果の発信のための学会発表に必要となる経費に使用する予定である。
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