網膜格子状変性とは、眼球の赤道部から周辺部網膜において、鋸状縁と平行に走る紡錘形の境界不鮮明な菲薄化した網膜変性のことであり、外部衝撃や加齢により変性巣の周縁に網膜裂孔や網膜剥離を形成することもある。網膜格子状変性は複数の疾患感受性遺伝子が重なることにより発症する多因子性遺伝疾患であると考えられているが、未だ疾患感受性遺伝子の明確な特定には至っていない。近年の我々のグループの研究により、眼組織の主要な構成成分であるII型およびIV型コラーゲンをコードする遺伝子が網膜格子状変性の発症に関与することを見出している。したがって本研究では、II型およびIV型コラーゲンをコードする遺伝子群を対象に詳細な遺伝子解析を実行し、網膜格子状変性とII型およびIV型コラーゲン遺伝子群の相関性を明確にする。 平成28年度までに、日本人集団において、網膜格子状変性と有意な相関を示すII型コラーゲン遺伝子およびIV型コラーゲン遺伝子内のSNP(single nucleotide polymorphisms:一塩基多型)を網羅的にスクリーニングしている。 平成29年度は、平成28年度に得られた遺伝子解析の結果について、新たな日本人集団を用いて再現性の検討(追認試験)を実行し、網膜格子状変性と真に有意な相関を示したII型およびIV型コラーゲン遺伝子内のSNP(リスクSNP)を複数特定した。その後、特定したSNPを対象に機能解析を実行し、特定したSNPの一部が関連コラーゲン遺伝子の発現量の変動に影響を与えることを示唆した。
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