マウスにおける実験的レーザー誘導脈絡膜新生血管(CNV)に対する組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)の血管新生作用の抑制効果について検討した。 今までにレーザー後 3 日目に浸潤するマクロファージ数および 血管内皮増殖因子(VEGF) の発現が最大になることを報告しており、また予備実験でレーザー後 5 日目に蛍光眼底造影で CNVが初めて観察できることを確認している。そこで、臨床応用を想定し、レーザー後 5 日目に tPAを硝子体内に投与して、CNV 抑制効果について、蛍光眼底造影およびフラットマウントによるCNV 容積を測定し、検討した。 tPAの硝子体内注射は蛍光眼底造影によるCNVからの漏出およびフラットマウントにおけるCNV容積ともに有意に抑制した(P<0.01)。また、レーザー照射網膜の組織学的検査ではtPAの硝子体内注射はフィブリン/フィブリノーゲンおよびCD31の発現が抑制した。一方で、網膜電図において、tPAを硝子体内注射した眼において網膜毒性を示唆する変化を認めなかった。 以上の結果より、実験的レーザー誘導CNVにおけるtPAの硝子体内注射はフィブリン/フィブリノーゲンの発現およびCNVの容積の抑制効果があり、tPAが臨床においてもCNVを標的とした新規のCNV治療法、もしくはその治療補助となる可能性を示唆し、現在のCNVに対する抗VEGF治療での医療経済や合併症や通院回数などの問題を軽減する可能性を考えると、その社会的意義は大きいと考える。
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