研究課題/領域番号 |
16K20325
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
畑中 宏樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (80368050)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 眼内線維化 / epigenetic / HDAC / HAT |
研究実績の概要 |
加齢黄斑変性(AMD)は増加中であり今なお視力予後不良な疾患である。予後を左右する要因として脈絡膜新生血管(CNV)を伴う網膜組織周囲の線維性変化が挙げられるが、網膜組織の線維化抑制治療は存在しない。AMD病態の進展は多因子であるが、近年epigeneticな調節機構の破綻が示唆されている。線維化抑制治療は他の網膜疾患(増殖糖尿病網膜症、増殖性硝子体網膜症)にも適応できる可能性がありそれらの新たな治療概念の創出のために研究を行った。RPEの相転移においてどのようなepigeneticな調節機構の破綻を認めるか検証を行った。RPEの線維化in vitroモデルとしてARPE-19を使用し、線維化誘導剤としてTGFβ2(30ng/ml)、TNFα(10ng/ml)を用いて線維化誘導を行った。次に各条件でのHDAC(ヒストン脱アセチル化酵素),HAT(ヒストンアセチル化酵素)活性への影響を調べるためにHDAC活性/HAT活性キットを用いて検討を行ったところ、HDAC活性に対しては有意な変化は認められなかったが、HAT活性においてTGFβ2、TNFα、TGFβ2+TNFαの条件下で有意な低下が認められた。さらにHDAC、HATのアイソフォーム別の発現を調べたところ、HATの代表的なアイソフォームであるCREBBP、GCN5の発現においてTGFβ2、TNFα、TGFβ2+TNFαの条件下で有意な低下とそれらの相乗効果も認められた。HDACのアイソフォームであるHDAC1の発現においてTGFβ2+TNFαの条件下で有意な低下が認められた。以上の結果を踏まえ、今後はRPEにおいて各種HDAC阻害剤のHDAC/HAT活性や細胞骨格への影響を検証することで得られた結果の裏付けを行い、また新規HDAC阻害薬であるOBP-801を用いたin vivoモデルでの検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroでの検証をRPE細胞株を用いて行っていることにより、安定した細胞の供給が行われている。また本研究は新たな実験系、評価系を必要とするのがともに現時点では確立できているため。
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今後の研究の推進方策 |
29年度では実験的AMDマウスを用いた研究が予定されており、その評価系の確立に時間を要することが予想されるが、概ね順調に進展しており、後半の研究計画通りに進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究が円滑に進み、購入予定の抗体を購入する必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度では新たな評価系を立ち上げるため,28年度での余剰金はその際の試薬購入に充てる予定である。当初申請していた29年度の直接経費は計画通り物品購入、旅費に充てる予定である。
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