生活習慣病は現代の社会的問題であり、失明原因の上位を占める加齢黄斑変性など、眼科領域でも注目される網膜疾患を引き起こす。加齢黄斑変性は、日本だけでなく世界においても失明原因の上位を占める疾患であり、長寿に伴い増加し国内では50歳以上の1%以上に見られる疾患である。加齢黄斑変性には慢性炎症がその発症の基盤にあるとされ、高BMI/肥満は、疫学的にリスク因子として知られる。また、食の欧米化が発症増加の一因であるとされる。しかし、高脂肪食・肥満が眼の炎症を引き起こすメカニズムには、不明の点が多かった。そこで本研究では、将来的に眼の生活習慣病に対する新規予防治療法の開発につなげるために、マウスに高脂肪食を摂取させ、高脂肪食負荷が眼局所に引き起こす慢性炎症を解析した。加齢黄斑変性の病態メカニズムとしては、網膜視細胞のメンテナンスの役割を持つ網膜色素上皮細胞の老化と酸化ストレスが根幹をなすとされることから、網膜色素上皮及びその隣接する血管豊富な組織で炎症に関連する脈絡膜における炎症性サイトカインおよびマクロファージ浸潤について解析した。今回の研究では、高脂肪食を負荷してもインスリン分泌は比較的保たれ糖尿病にはならないが、著しい高脂血症にはなるBalb/cマウスを用いることで、高脂肪食そのものの影響を検討することができた。具体的には、網膜・網膜色素上皮・脈絡膜を含む切片における免疫組織学的手法、ELISAやウエスタンブロット等の生化学的手法、リアルタイムPCRを基本とした分子生物学的手法を用いた解析を行った。
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