研究課題/領域番号 |
16K20345
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
北川 孝雄 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20614928)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酵母 / Yeast two-hybrid / EWS-FLI1 / ユーイング肉腫 / BioID |
研究実績の概要 |
ユーイング肉腫は小児や10代の若年性の骨及び軟部組織に発生する腫瘍であり、悪性度が高く、転移頻度も共に高い。がん化の原因として、染色体の相互転座による転写活性化部位を持つEWS遺伝子とDNA結合部位を持つFLI1遺伝子の融合遺伝子EWS/FLI1が85%以上の症例で検出される。他にもEWS/ERG、EWS/E1AFなどの組合せもユーイング肉腫で検出される。 EWS/FLI1、EWS/ERG、EWS/E1AF遺伝子を酵母で発現させると著しい増殖低下を示すことから、増殖低下を解除する変異体を同定した。その結果、酵母で同定した3種の融合遺伝子の変異部位は、ETSファミリーのFLI1、ERG、E1AFのETSドメインのみに集中しており、HEK293細胞では、EWS/FLI1の転写活性に必要であることを見い出した。本研究では、ETSドメインを介したユーイング肉腫のがん化作用機序の解明のため、ETSドメイン結合タンパク質の同定を行うことを目的とした。研究計画している項目は、酵母とユーイング肉腫細胞を使った1.ETSドメインを標的とする結合タンパク質の同定、2.それらの結合タンパク質のEWS/FLI1に対する増殖及び転写活性を調べることである。 ユーイング肉腫細胞を用いたETSドメイン結合タンパク質の同定のために2つのアプローチを行った。一つ目の方法は、Yeast two-hybridによってFLI1のDNA結合領域と相互作用するタンパクのスクリーニングを行った。独立した遺伝子として3クローン同定できた。2つ目の方法は、BioID法を使った。BioIDにEWS-FLI1を融合させ、HEK293にトランスフェクションし、BioIDによりビオチン化された結合タンパク質を質量分析装置で同定した。その結果、多数の結合タンパクを同定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、本研究は以下の項目を明らかにすることを目的としていた。 1.酵母を用いたETSドメイン結合タンパク質の同定 2.ユーイング肉腫細胞を用いたETSドメイン結合タンパク質の同定 1.に関しては、EWS及びFLI1ドメインを発現するYeast two-hybridベクターに導入し、ヒトcDNAを発現するライブラリーでスクリーニングを行った。3つの独立したクローンを同定することができた。そのうち1つはプロテアーゼの一種であるcathepsin Vであった。 2.に関しては、当初FLAGを用いた共免疫沈降を目指したが新しいタンパク相互作用解析ツールであるBioID法を使用した。BioIDにEWS-FLI1を融合させたベクターを作製し、HEK293にトランスフェクションし、ビオチンを添加することで融合タンパクをビオチン化した。ビオチン化したタンパクを質量分析で解析した結果、多数のタンパクを同定することが出来た。これらの中には複合体を形成すると報告されているものが含まれた。特にBioID法では多数のタンパク質を同定することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に同定した候補タンパク質についてHEK293細胞及びユーイング肉腫細胞株での表現型解析を進めていく。特にBioID法で同定したタンパク質は複合体を形成しているものが同定された。BioID法でスクリーニングした際は、EWS-FLI1と融合する位置がN末端かC末端かで変化する可能性がある。今後は、EWS-FLI1のC末端にBioIDに融合したベクターを作製し新規結合タンパク質を同定する。さらに再現性を確認し、ユーイング肉腫細胞の増殖に関与するのかどうかを検討していく。
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