ユーイング肉腫は小児や10代の若年性の骨及び軟部組織に発生する腫瘍であり、悪性度が高く、転移頻度も共に高い。がん化の原因として、染色体の相互転座による転写活性化部位を持つEWS遺伝子とDNA結合部位を持つFLI1遺伝子の融合遺伝子EWS/FLI1が85%以上の症例で検出される。他にもEWS/ERG、EWS/E1AFなどの組合せもユーイング肉腫で検出される。 研究計画している項目は、酵母とユーイング肉腫細胞を使った①ETSドメインを標的とする結合タンパク質の同定、②それらの結合タンパク質のEWS/FLI1に対する増殖及び転写活性を調べることである。 酵母を使った結合タンパク質の同定に関してはスクリーニングの結果、候補遺伝子を同定したが、再現性を得ることができなかった。そこで、方法を変更し、BioID法による結合タンパク同定をHEK293細胞で行ったところ、数種類の結合タンパク質候補を得ることができた。 候補タンパク質として、SFPQ、FUS、NONO、PSPC1に着目した。これらの分子はparaspeckle compornentと呼ばれる複合体を形成し、DNA損傷部位に集積していることが知られている。EWS-FLI1はparp1阻害剤に感受性であることが知られており、候補分子との相互作用が予想された。Nanobitを用いた結合試験では候補タンパク質とEWS-FLI1との結合は確認できなかった。そこで、BioID法の感度を上げるために、PiggyBacシステムを用いる系をpuromycin、tet-onのシステムで構築した。構築したベクターにEWS-FLI1、EWS-ERG、EWS-E1AFを発現するベクターを構築し、ユーイング肉腫細胞へ導入した。現在ビオチン化タンパクの解析を行っている。
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