神経芽腫自然発生モデルマウス(ヒトMYCN Tgマウス、heteroの個体は100%の確率で神経芽腫が発生し、およそ50%の確率で自然退縮をきたす)での基礎検討において、マウスDCの投与による腫瘍消失率が80%を超えることから、自然退縮に関しては免疫系の中にメインエフェクターがあると想定した。退縮時期や既報などからNK細胞と抗体(B細胞)の関与が考えられることから、この二つをターゲットとして解析を進めた。各種depletion抗体を用いて検討を行った結果、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、NK細胞の自然退縮ならびに生存期間に与える影響は無視できる程度であることが明らかになり、一方で抗体による影響が強く疑われたためさらに詳細な解析を行った。 驚くべきことに、当該抗体は腹腔内に存在するB細胞が産生する自然抗体、中でもIgMおよびIgG3が主であることが明らかになった。この抗体の血中濃度と自然退縮との間には正の相関があり、CDC活性があることも確認が出来た。ところが、この抗体を産生する腹腔内B細胞を除去すること、或いは抗体価の高い個体の血漿を投与することは、自然退縮率に影響を与えないことが明らかになった。 神経芽腫の自然退縮に対し、自然抗体は退縮時のバイオマーカーとしては有用であるものの、そのエフェクターとして働くのではないことが示唆された。ただし、退縮を来さない場合には腹腔内のB細胞数そのものが大幅に減少することと、母体からの移行抗体の影響についてはさらなる精査が必要であると考えられる。
|