研究課題/領域番号 |
16K20349
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
上野 瞳 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 小児血液・腫瘍研究部, 上級研究員 (30435630)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腎明細胞肉腫 / 小児がん / BCOR |
研究実績の概要 |
本研究は、小児腎腫瘍である腎明細胞肉腫で発見した新規BCOR変異(BCOR-ITD)の機能を結合因子の結合能やエピゲノムの観点から解析し、腫瘍形成メカニズムを明らかにすること、ゲノム編集を用いて腫瘍モデルの作出を試みることを目的としている。さらに、他の小児がんで認められる他のBCOR変異との機能的な相違についても検討し、小児がん発症におけるBCOR変異の役割について検討する。 本年度は、細胞株HEK293を用いてBCORとBCOR結合因子(PCGF1、BCL6、MLLT3)との結合能の検討および腎明細胞肉腫腫瘍検体を用いたヒストン修飾解析(ChIPシークエンス)を実施した。BCOR結合因子の結合能については、野生型BCOR (long isoform)、BCOR-ITD変異、ナンセンス変異(S1642XおよびE1732X)を比較検討した。内在性BCORと区別するためBCORタンパクは全てFLAGタグを融合し発現させ、結合因子については、Mycタグを融合し共発現させた。免疫沈降を行い、種々のBCOR変異における結合因子(PCGF1、BCL6)の結合能について、相違を明らかにした。MLLT3については、継続して検討中である。さらに、一部の結合因子のタンパク量または安定化状態が、BCOR変異との組み合わせおよびBCORタンパクの量に依存する傾向が認められた。また、ChIPシークエンス解析は、腫瘍凍結検体からのライブラリ作成条件に時間を要したが、転写活性修飾(H3K4me3、H3K27ac)および不活性化修飾(H3K9me3、H3K27me3)について概ね条件を決定し、1症例の解析を実施した。今後も継続して解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タンパクの結合実験について、結合因子を特異的に検出可能な抗体が入手できず、レトロウイルスによる強制発現系を構築したが、さらにBCORタンパクを発現させると、なんらかの影響で発現量が変化してしまう現象が起きた。そのため、再度、co-transfectionへと実験系を変更したため、当初の予定より大幅に時間を要してしまった。 また、ChIPシークエンスに関しては、3症例を予定していたが、凍結検体からのライブラリ作成条件の検討に時間を要してしまった。1症例は解析が完了し、他2例について継続してライブラリ作成を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質の結合実験については、コンストラクトの作成が完了してしているため、継続して実験を行う。 ChIPシークエンスに関しては、現在も継続してライブラリ作成を行っており、順次シークエンス解析を行う。しかし、予定以上に検体を必要とするため、エンハンサー修飾についての検討も予定していたが、状況により転写活性化修飾および不活性化修飾の解析を優先する。また、DNAメチル化修飾実験と同一検体による統合的解析を予定していたが、検体量が少ないため、状況により別検体を使用することを検討する。 29年度に計画していたゲノム編集を用いた腫瘍モデルの作出については、計画通り着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク実験およびヒストン修飾実験における実験条件の変更および遅れにより、計画していた学会発表や論文の発表に至らず、物品費が予定以上に必要と判断し、人件費等の使用を取りやめた。主にChIPシークエンス解析における次世代シークエンサーの試薬代として、次年度へ繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、主に次世代シークエンサーの試薬代として使用する予定である。 翌年度請求額については、計画通りゲノム編集による腫瘍モデル作出のための実験に使用する。
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