研究課題/領域番号 |
16K20359
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
徳山 英二郎 岡山大学, 大学病院, 助教 (90379785)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 伸展培養 / メカノメディスン / 培養表皮 |
研究実績の概要 |
研究計画にそって、Green型培養表皮シート作成実験を行った。当初feeder layerとして使用した3T3 Swiss Albino(RIKEN CELL BANK)は入手容易ではあったもののfeederとしての機能に劣っている可能性があり、良好な表皮細胞シート作成に至らなかったため臨床及び原法で使用されている3T3 J2(kerafast)を新規入手し、これを変更した。まず、静置培養条件にて至適なfeeder layer(3T3 J2)の作成手順、表皮細胞NHEK(KURABO)の播種密度等を検討し、Greenの報告に近い重層化した表皮細胞シートを得られるまでとなった。その後、前実験で得られた至適条件に則り、伸展培養器での培養表皮シート作成実験を開始した。全て同型の培養容器を使用し、伸展刺激群(伸展率10%、伸展→30秒保持→解放→30秒保持を繰り返し)、非伸展群(コントロール)で最長3週間培養し1,2,3週時点での表皮シートサンプルを得た。得られた表皮細胞シートを固定後にH-E染色し、組織学的に厚みおよび基底層の細胞核数を解析、検討した。またシートとして採取不可能な培養初期(表皮細胞播種後1、3、5日目)における表皮細胞のspreadingの評価は上皮系細胞を選択的に染色するRhodamine B染色を直接容器上で行い、染色された表皮細胞部分の面積占有率を計算した。結果、両群間において得られた表皮シートの性状、厚みに有意差はなく、培養初期のspreadingでは伸展群がやや劣る傾向にあった。原因として伸展培養環境では、培養容器への細胞の定着が不安定となるため、feeder細胞が早期に剥離、損失してしまうためと考えられた。そのため、培養容器の各種コーティング処理および伸展刺激の設定を調節中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要に記載のごとく、現在は伸展刺激によるfeederの安定性の確保および、至適伸展刺激条件の検索に時間を要している状態である。 特にfeederの安定性については、伸展培養容器の素材(シリコン樹脂製)そのものが細胞との定着性に乏しいことも影響しており、種々のコーティング法を試験中である。 過去の我々の研究ではヒト3次元培養全層皮膚に伸展培養を加え表皮の重層化が促進されることが確認されており、当実験においてもfeederの安定化が得られれば同様に良好な表皮細胞の重層化が得られると予想される。
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今後の研究の推進方策 |
まず現在継続している伸展培養の至適条件を検索する。 コーティング方法の見直しおよび、進展刺激の緩和等を検討し、それでもfeederの安定性が得られず、完全なgreen型培養表皮での進展実験が困難な場合は、過去我々が作成した3次元全層皮膚と同様の手法を用い、ゲル培養したfeeder上に表皮細胞を播種する方法も考慮する。 続いて、得られた表皮細胞シートを用いてヌードマウスへの移植実験を行う。ヌードマウス(BALB/c-nu)の背部に10×10mmの皮膚欠損を2か所作成し、伸展刺激群および非伸展群の表皮培養シートを皮膚欠損に移植する。移植後2週および4週での面積評価を行い、シート面積の収縮率を計算、更に組織採取を行い、表皮層の厚さ、基底層における基底細胞の細胞密度を計測する。 更に、透過型電子顕微鏡を用いた基底膜構造の観察や、細胞増殖マーカーであるPCNA、表皮角化細胞の分化マーカーであるK10/14およびinvolucrinに対する免疫組織染色を行う方針である
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次年度使用額が生じた理由 |
今回、経費に計上していた機械負荷装置(STB140、ストレックス社製)を新規購入する予定であったが、他教室の中古機械をレンタルしていただけることになり、現時点での購入の必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
他教室からレンタルした機械が故障した際は、新規購入を検討する。また、今年度培養表皮の安定した培養方法の確立に苦慮しており、来年度は培養方法、器材の大幅な変更を検討しており、予定以上の経費がかかることが見込まれるため、これに使用する予定である。
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