前年度に引き続き、研究計画にそって、Green型培養表皮シート作成実験を行った。3T3 J2(kerafast)細胞をfeederとしてヒト正常表皮角化細胞NHEK(KURABO)を基に作成した培養表皮シートの作成実験を行った。前年度報告で報告した培養初期の細胞が剥がれる問題については、コーティングと進展刺激の強度を調整することで克服を試みた。最終的にはコラーゲンゲル培養を応用することで、細胞の剥がれを克服するとともに、良好な伸展の刺激を伝えることが達成できた。 続いて、計画に則り、免疫不全動物を用いた培養表皮シートの生体への移植実験を行った。免疫不全マウスBALB/nuおよびNOD scidを用い、マウス背部に2か所、1cm四方の皮膚欠損を作成し皮膚移植モデルとした。モデルの皮膚欠損部へ、それぞれ進展刺激を加えて作成した培養表皮と、加えていない培養表皮をコントロールとして移植した。移植方法は培養表皮シートのみでは強度が足りないため、通常の臨床と同様に濾紙を担体として用い、濾紙ごと背部へ縫合固定した。 移植後1週で固定の濾紙を除去して創部を確認したところ、両群とも培養表皮の一部の生着は確認されたものの、大部分は融解、脱落した。 培養表皮の生着が不十分であった原因としては、感染、マウスの免疫反応、固定不良、培養表皮自体の活性の他、移植先の皮膚欠損創の環境(脂肪、筋膜上、あるいは真皮様構造の必要性等)が関係していると想定された。前記事項を明らかにするため、引き続き、動物実験の改良を行っている。
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