C57BL/6マウスの背部に1×3cmの乱軸型皮弁を作成し術直後から1日毎にニトロソニフェジピン 30 mg/kgもしくは同量の溶媒を皮弁内に局所投与し,それぞれ投薬群,対照群とした。その結果,投薬群では対照群に比べて有意に皮弁生着域が拡大した。ニトロソニフェジピンによる酸化ストレス抑制を確認するため,皮弁組織中のMalondialdehyde計測を行った。術後3日目のMalondialdehydeが投薬群で有意に減少しており,皮弁内における酸化ストレスがニトロソニフェジピン投与によって抑制されていることが示された。酸化ストレスによって組織壊死が引き起こされる機序としてアポトーシスに着目し,TUNEL染色を行ったところ投薬群では対照群に比べて有意にTUNEL陽性細胞数が減少していた。さらに酸化ストレスによるアポトーシスに関わるp38 MAPKのリン酸化タンパク発現を検出したところ,投薬群では対照群に比べて有意に減少しており,ニトロソニフェジピンによって酸化ストレスによるアポトーシスが抑制されていることが示唆された。酸化ストレスによる組織壊死には血管内皮障害が影響すると報告されているため,組織中のeNOS タンパクとVCAM-1タンパクの発現を両群間で比較した。その結果,投薬群では対照群に比べて有意にeNOSタンパクが増加し,VCAM-1タンパクが減少していることが認められた。これらからニトロソニフェジピン投与によって血管内皮障害が軽減されていると考えられた。以上の結果から,ニトロソニフェジピンは酸化ストレス抑制,アポトーシス抑制,血管内皮障害抑制を介して虚血性皮弁壊死を抑制することが示された。
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