研究課題
平成28年度は、下記の成果を得た。(1)Staphylococcus aureus(S.aureus)を用いた接触感染による皮膚感染創モデル(水平感染モデル)を確立した。このモデルを用いた肉眼的な創傷治癒解析において、miRNA KO マウスではコントロールと比較して創治癒遅延を認めた。また、miRNA KO マウス由来好中球は、有意に S. aureus 貪食能の低下が認められた。その原因は、miRNA KO 好中球の遊走能の低下が原因と考えられた。(2)生体イメージング解析装置(IVIS)による in vivo イメージング用いて、皮膚感染創におけるlys-EGFP マウスと、miRNA 遺伝子欠損(KO)マウスとを交配し作製した、 miR KO/lys-EGFP マウスの炎症細胞の動態を解析した。結果、miRNA KO マウスでは、炎症早期の創部への炎症細胞の集積に遅延を認めた。(3)共焦点顕微鏡を用いた細胞の形態学的・運動機能学的な解析(トラッキング解析)では、miRNA KO マウスから採取した好中球の明らかな形態変化と、遊走能の変化を認めた。また採取した好中球の遊走時におけるSmall GTPase familyタンパクの発現量の明らかな増加を認めた。(4)ルシフェラーゼアッセイを用いて結合実験を行ったところ、タンパク発現量の増加を認めたsmall GTPase familyがmiRNAのターゲット遺伝子であることが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、感染創におけるmiRNAの機能解析を主な目的としていた。具体的には、(1)肉眼的、組織学的な創治癒解析、(2)in vivo イメージング装置を用いた炎症細胞の機能解析、(3)miRNAのターゲット遺伝子の解明である。実績概要に記したように、全体的な研究の流れは予定通りに進行している。今後は、通常の皮膚創傷治癒過程だけでなく、KOマウスのその他の表現系解析を目指す(現在進行中)。以上、これまでの進行状況を考えて、「②概ね順調に進展している」と判断した。
平成29年度は、作出している種々の遺伝子改変マウスを用いて、皮膚創傷治癒解析、表現系解析、組織学的解析、原因遺伝子の解析を行う。そして実際に、遺伝子改変マウスや臨床サンプルを用いた解析・情報発信を行うことにより、研究成果の応用と問題点の克服を目指したい。
論文掲載料を支払うために確保していたため。4月20日現在、請求書をまだ受け取っていない。
論文掲載料として支払う予定である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
J Invest Dermatol
巻: 137 ページ: 931-940
10.1016/j.jid.2016.11.018