平成29年度は、下記の成果を得た。 (1)miR-142 が司る皮膚創傷治癒過程・炎症・生命恒常性維持機構の詳細な解明を目的とし、CRIPR/Cas システムを用いて全身性 miR-142 遺伝子欠損(KO)マウスの作製・繁殖を行った。一方、組織特異的 miR-142 KO マウス作製のため、miR-142 に flox を導入した 2 系統のマウスの作製に成功した。現在のところ、目立った異変は認められず問題なく生存可能であると考えている。 (2)炎症関連 miR-223 の機能解析を行った。まず in situ hybridization を用いて皮膚創部における miR-223 発現細胞の同定を行った。その結果、好中球に有意に発現していることが確認された。次に、黄色ブドウ球菌認識時における好中球活性化の分子メカニズム解明に取り組んだ。その結果、黄色ブドウ球菌を認識した好中球は、転写因子 C/EBPalpha の発現が減弱することが明らかとなった。C/EBPalpha は、miR-223 の発現を促進することが明らかとなっている。一方、miR-223 は、炎症性サイトカインであるインターロイキン 6(Il6)を翻訳抑制する。上記メカニズムを統合すると、黄色ブドウ球菌を認識した好中球は速やかに C/EBPalpha 発現を減弱させ、miR-223 発現減少を誘導する。その結果、Il6 発現上昇を誘導させ、黄色ブドウ球菌排除に寄与していると判断された。本研究成果は、miR-223 を標的とした黄色ブドウ球菌感染創改善効果を有する新規治療法の開発に寄与すると考えられる。
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