昨年度までの研究で、癒合部分でエストロゲンレセプターの発現を見出すことができた。エストロゲンレセプターにはαとβがあることが知られている。正常マウスにおいて生後1週間ほどで自然癒合するposterofrontal sutureに着目して検討を行ったところ、エストロゲンレセプターβの発現に関しては有意差はなかったものの、エストロゲンレセプターαの発現は癒合段階にある posterofrontal sutureで多く発現しているという新知見を得た。そこでエストロゲンレセプターαノックアウトマウスを用いて、posterofrontal sutureの自然癒合の過程を検討したところ、正常よりもその癒合が遅延することが判明した。 そこで、野生型とエストロゲンレセプターαノックアウトマウスの生後7日目での頭蓋骨での遺伝子発現を検討したところ、Runx2、Sox9、ALPの発現量がノックアウトマウスでは減少していることが判明した。 現在、乳がん治療においていくつかのエストロゲンレセプター拮抗薬が使用されている。今後は、こうした拮抗薬が縫合の癒合を阻止でき、治療薬として使用できるか(胎児への使用への安全性)を検討していく。
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