これまでの研究で、癒合部分でエストロゲンレセプター(ER)の発現を見出すことができた。さらに癒合段階にあるposterofrontal suture においてERαが多く発現しており、このノックアウトマウスでは癒合が遅延していた。当初は乳がんにおいて使用されるER拮抗薬の投与によるその効果の検討を考えていたが、乳幼児への投与はその後の成長発育に影響すると考えERの別視点からの関与を検討することとした。 以前より骨粗鬆症に代表されるようにERと骨新生・骨吸収に関しては様々な研究がなされており、中でも破骨細胞・骨芽細胞でのER発現はその活性に関与していることが知られている。すなわちERを発現した骨芽細胞が刺激され、骨新生が促進し、癒合するという仮説が考えられた。そこで開存部分と癒合部分の縫合の蛋白質発現を再検討したところ、オステオモジュリンが癒合部で多く発現していた。オステオモジュリンに関しては骨でのその役割はいまだ明らかにはされていない点が多い。その中で、破骨細胞が活性化することで骨芽細胞でオステオモジュリン発現を誘導するという報告もあり、これは我々の仮説を裏付ける。 以上のように頭蓋縫合の早期癒合に関しては様々な要因が深く絡んでおり、その全貌を解明するには至らなかったが、破骨細胞・骨芽細胞でのERの発現により、骨芽細胞が優位となる一方で、破骨細胞の活性が低下することが癒合に関与していることが示唆された。
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