研究実績の概要 |
炭酸ガスレーザーの低出力照射治療(LLLT)が、皮膚創傷治癒を促進させる効果があると知られている。今回我々は、その細胞生物的なメカニズムを解明することを目的とした研究を行った。 まず、炭酸ガスレーザーのLLLTによるヒト皮膚線維芽細胞の増殖能、遊走能への影響をみるために、播種した細胞に様々な出力条件(0.1, 0.5, 1.0, 2.0, 5.0J/cm2)でレーザーを照射した後に、それぞれMTS assay、Scratch assayを行った。次に、1.0J/cm2の条件で炭酸ガスレーザーを照射した線維芽細胞からタンパク質を採取し、Akt, ERK, JNKといった細胞内シグナル伝達分子の活性変化を、Western Blot Analysisで解析した。最後に、Akt, ERK, JNKそれぞれの阻害剤を使用し、各種シグナル伝達経路を阻害した状態で、MTS Assay, Scratch Assay及びWestern Blot Analysisを行った。 結果として、MTS assay及びScratch assayでは、1.0J/cm2という条件のレーザー照射時に、最も線維芽細胞の増殖能及び遊走能が促進された。Western Blot Analysisでは、レーザーを照射した線維芽細胞においてAkt, ERK, JNKの活性化がみられた。また、それらのタンパク質をそれぞれ阻害すると、レーザー照射による細胞増殖能促進、及び遊走能促進が抑制され、またそれぞれのタンパク質の活性化も抑制された。 以上の結果から、炭酸ガスレーザーのLLLTにより、ヒト皮膚線維芽細胞の増殖能及び遊走能が促進されることが分かった。また、炭酸ガスレーザーのLLLTによる線維芽細胞の増殖能及び遊走能促進効果に、Akt, ERK, JNKといったシグナル伝達経路の活性化が大きく関わっていると示唆された。
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