本研究の目的は、周期的伸展刺激による瘢痕形成動物モデルを作成し、実験室レベルでの応用化をすることであり、その背景には瘢痕形成における、上皮間葉作用の影響を調査する目的がある。平成28年度までの研究において動物モデルの作成方法を確立し、伸展刺激付加の大きさ・頻度・期間、組織標本作成のプロトコルを作成、周期的伸展刺激によって瘢痕形成を引き起こすモデルを成立させた。具体的には、磁力を利用した周期的伸展刺激付加装置を改良増設し、マウスに作成した縫合創に本装置を使用して周期的伸展刺激を付加することにより、ヘマトキシリン染色・エラスチカワンギーソン染色を施した組織標本上での瘢痕組織形成傾向が確認された。 平成29年度は、平成29年7月から平成30年3月まで、産前産後・育児休業のために研究を完全に中断し、平成30年4月付で、研究者の転勤のため研究場所の移動を行った。そのため、過去の研究データ、研究資料、実験装置の移設に労力を割いており、研究面での大きな進展はなかった。 平成30年度は本研究で目標の一つとしていた、実験装置の動力をモーター・永久磁石から電磁石への変更を試みた。しかし、理想としていたマウスケージサイズに収まる電磁石の制作、ケージ内に安定した磁場を設定し、プロトコルの刺激付加期間である3週間継続して磁力による伸展刺激を安定的に付加できる環境を作成することは極めて困難と判断した。 また、もう一つの目標であった、周期的伸展刺激と瘢痕形成に関与した各サイトカインの関係についての調査であるが、特に重要視していた周期的伸展刺激とエンドセリン1(ET1)の関与を調べるべく、得られた組織標本にET1抗体免疫染色を再度行い、実験群と対照群の比較を具にしたが、予測していたような有意差を確認することができなかった。
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