アシドーシスは、心筋のカテコラミン反応性を減弱させ、心収縮力を低下させることが知られている。本研究では、呼吸性アシドーシスモデルを用い、カテコラミンβ1受容体を介さずにホスホジエステラーゼⅢ阻害作用および心筋カルシウム感受性増強作用のデュアルエフェクトにより心機能の増大が期待できるピモベンダンの治療効果を検討した。 6頭のビーグル犬に、正常時と呼吸性アシドーシス時において、カテコラミンβ1作動薬であるドブタミンもしくはピモベンダンを交差試験で投与し、肺動脈カテーテルを用いた熱希釈法により心拍出量を測定した。 正常時において、ドブタミンは用量依存性に心拍出量、心拍数、および肺動脈圧を有意に増加させたが、ピモベンダンでは用量依存性に心拍出量および心拍数は有意に増加させたが、肺動脈圧には影響しなかった。 呼吸性アシドーシス時には、内因性のアドレナリンおよびノルアドレナリンによって心拍出量、心拍数、および肺動脈圧が有意に上昇した。ドブタミンは用量依存性に心拍出量、心拍数、および肺動脈圧を有意に増加させたが、アシドーシス環境下では交互作用が認められ、その作用は減弱した。ピモベンダンは用量依存性に心拍出量および心拍数を有意に増加させたが、アシドーシス環境下では交互作用が認められ、その作用は減弱した。一方、ピモベンダンは肺動脈圧には影響しなかった。 本研究によって、ピモベンダンはアシドーシス病態下ではその作用が減弱されることが明らかとなったが、肺動脈圧には影響しないことが明らかとなった。
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