研究課題/領域番号 |
16K20383
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
川島 信吾 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10467251)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 虚血再灌流障害 / 軽度低体温 |
研究実績の概要 |
蘇生後の目標温度は旧ガイドラインの32-34℃から「32-36℃」に変更された。神経学的予後による温度設定の変更であるが、心筋再灌流障害予防の効果においての適正温度は不明である。一方、蘇生の現場では高濃度酸素投与が行われているが、近年高濃度酸素による予後悪化の報告がある(Helmerhorst, et al. Crit Care Med. 2015;43:1508-19)。今回、ラット孤立心筋モデルを用い、目標体温①36℃低体温法の心筋保護効果、さらに、灌流液の中に水素ガスを投与し、②水素ガスが持つROS抑制効果が、活性酸素から心筋を保護する効果があるかを検討し、臨床現場での蘇生に応用できるようにする。初年度では、Sprague-Dawley 雄性ラットを対象に、ランゲンドルフ装置を用いた孤立心筋モデルを作成する。ランゲンドルフ装置にて使用する灌流液はmodified Krebs-Henseleit bicarbonate bufferとする。これを用いて、灌流液温度を37℃から36℃に低下させる低体温法の、虚血再灌流に及ぼす影響を検討した。この灌流液は①酸素ガス95%および二酸化炭素ガス5%にて飽和させる。大気酸素濃度の条件を再現するために灌流液を②酸素ガス21%、二酸化炭素ガス5%、および窒素74%で飽和させる群も作成。書く群は8例とした。 再灌流90分後の心筋の左心室横断切片をTriphenyltetrazolium Chloride (TTC) 染色を行った後、直ちにデジタルカメラで撮影し心筋梗塞範囲を定量した。 水素灌流モデルまでをしたのち、各群の比較検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ランゲンドルフ装置を用いた孤立心筋モデルの作成に時間を要した。 ランゲンドルフ装置の確立と手技安定に時間がかかってしまったことによる遅れである。水素の投与モデルまで行う予定であったが、水素のモデルの施行はできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
心筋虚血再灌流障害の主因の1つは再灌流直後に始まるROSの爆発的増加といわれている。本研究では臨床の条件に近づけるために、低体温開始を再灌流直後に設定している(心肺停止症例では、病院についた後に蘇生されるため、実際の臨床では低体温療法は蘇生後であるため)。しかし、この開始時点は灌流温36度という本研究の条件では左心室梗塞範囲を減少させるのには遅すぎる可能性がある。そこで、もし予想と異なる結果が得られた場合、低体温開始時点を30分の全虚血期間に早めるなどして対応を試みる。水素ガスの臨床効果は1-4%と言われている。ROSを抑制するのに十分量になるよう、予測した心筋保護効果が見られない場合は2%から4%に濃度をあげて対応する。また、灌流液は①酸素ガス95%および二酸化炭素ガス5%にて飽和させた群と大気酸素濃度灌流を行う際には灌流液を②酸素ガス21%、二酸化炭素ガス5%、および窒素74%で飽和させた群を行ったが、水素ガス投与群では①、②の気体に2%の水素ガスを混合する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画通りの実験の施行が不可能であった。つまり、 36℃の低体温法と大気酸素濃度、水素ガス混合再灌流の組み合わせにより、control群、TH(低体温法36℃)群、normoxia(大気酸素濃度再灌流)群、TH normoxia群、水素;群、TH+水素群の予定であったが、水素投与群の作成に間に合わなかった。技術的な問題であったが、このためにWestern blot のNOSタンパクの転写効率、抗体濃度等の条件設定を余剰心筋により行うことができずその費用が繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、孤立心筋モデルによる実験、TTC 染色による心筋梗塞範囲測定を行うための灌流液作成用試薬、酸素ボンベ類、ラット購入及び飼育、TTC 染色試薬の購入。 免疫泳動法に用いるトランスブロットSD セル PP HC システム (Bio-Rad 社)を購入する。平成29-30 年度は主としてWestern blot 法によるeNOS, iNOS, nNOS タンパクの定量を行う予定である。このための試薬、抗体、消耗品が必要である。
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