Sprague-Dawley 雄性ラットを対象に、ランゲンドルフ装置を用いた孤立心筋モデルを作成した。各群を8例ずつとした。37℃で95%酸素濃度の灌流液で2 0分間の安定化後に、30分間の完全虚血にする。その後、温度を変化させて、再灌流を90分行った。孤立心筋の灌流液の温度を37℃から36℃と34℃に低 下させ低体温法の、虚血再灌流に及ぼす影響を検討した。孤立心筋モデル灌流後の左心室横断切片はTriphenyltetrazolium Chloride (TTC) 染色を行った後、直 ちにデジタルカメラで撮影し心筋梗塞範囲を定量した。デジタルカメラで撮影した染色心筋を当講座が開発した色を識別して面積を計測する装置で正確に心筋梗塞サイズを計測した。心筋梗塞サイズの変化の結果は コントロールグループは45.2%±13.9% 34度の低体温群では、10.9%±5.3% (p<0.001)、36度低体温群では28.2%±9.5%(p<0.001)であった。他に記録したバイタルデータ(心電図波形、心拍数、左室内圧、冠灌流量、灌流液温度、PaO2、PvO2、lactate)については各群で優位な差は見られなかった。これにより心筋梗塞のサイズは体温によって変化することがわかった。水素の投与による心筋梗塞サイズの影響はランゲンドルフ装置の不具合により確認できなかった。そこで、水素の最適濃度の調査へと切り替え、水素ガスの吸入が出血ショックによる心筋毛細血管へのダメージを観察した。水素無し、1.2%、3%と水素濃度を変化させた。結果として1.2%水素ガス吸入はラット出血性ショックモデルにおいて血管内皮を保護し、クレアチニンの上昇を抑制し、生存時間が延長した。3%水素ガス吸入ではこれらは認められなかった。
|