研究実績の概要 |
重症敗血症患者の多くは人工呼吸器管理を要し、人工呼吸器関連肺損傷(Ventilator Induced Lung Injury, VILI)を来すと、その死亡率は30%を超える。現在、肺障害に対し質の高いエビデンスのある治療は低一回換気量換気による肺保護換気のみで、これは悪化を防ぐための予防に過ぎない。 本研究では、腸管穿孔による敗血症モデルラットを作成し、高一回換気量による人工呼吸管理を行う事で、敗血症性人工呼吸関連肺障害モデルラットを作成し、これに対し近年、抗凝固作用の他に抗炎症作用を持つと考えられているトロンボモジュリンを投与することで、肺傷害の改善を得られるか調べた。 これまでに、我々の作成した敗血症性人工呼吸関連肺障害モデルラットは、血液炎症データ、mRNAデータなどから敗血症が起こっていることが明らかとなった。しかし、同時に血液の凝固データからDICは起こっていないことがわかった。とりわけ、血液炎症データは著明ではないものの、肺胞洗浄液(BALF)中のタンパク量は増加しており、敗血症の影響のみではなく、人工呼吸による悪影響が及ぶことで、敗血症性人工呼吸関連肺障害が起こっていることが確認できた。また、血液ガスデータから低一回換気量換気では実験時間中の酸素化の悪化を認めなかったが、高一回換気量での換気により酸素化が悪化していることも確認した。トロンボモジュリンを投与することによる効果について生理学的データ、血液データ、BALFデータ、mRNAデータならびにBALF顕微鏡所見などを用いて現在解析を行っている。
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