研究実績の概要 |
我々はTMの細胞外ドメイン(Domain 1,2,3)と抗体の定常領域を融合したリコンビナントTMD123-Fcを作成、精製してヒト末梢血単核細胞(PBMC)との結合を調べてインテグリンの活性依存的に結合する事を明らかにしてきた(BBRC 2016)。 これらの結合実験では固相化したTMの細胞外ドメインとヒト末梢血単核細胞との接着を観察するための特異的な実験系(TMのみを固相化して白血球が結合するか確認する実験系)で証明した。しかしながら実際の血管内皮細胞上にはTM以外にICAM-1、VCAM-1など他のインテグリンリガンドが多数存在している。また、炎症刺激によりTMやICAM-1の発現量も変化し、TMが白血球に結合する意味も炎症時と非炎症時では異なると考えられる。 そこで今年度はより生理的な条件下での白血球とTMとの結合を確認した。すなわち血管内皮細胞(HUVEC)と白血球(PBMCやTHP-1など白血球のcell lineを用いる)との結合にTMD123が関与していることを証明するために①固相化したHUVECと白血球との結合実験を行い、この結合が2価陽イオン依存性に増強される事を確認した。さらに炎症時にはHUVEC上に発現するTMやICAM-1の発現量が変化することを踏まえ、②この結合がTNF-α刺激で増強することを確認した。 今後は③この結合がTMD123(リコモジュリン)投与により抑制されるか?すなわちDICの治療に臨床で使用されているリコモジュリンに新たな抗炎症作用(白血球と血管内皮細胞の接着抑制作用)が認められるか検討する。さらに④HUVECと白血球の結合阻害にリコモジュリンのどの細胞ドメインが関与するのか?を各ドメインのみで作成したリコンビナントタンパクで検討していく。
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