我々はTMによる抗炎症作用を解明する一環として、白血球の血管内皮細胞への接着に及ぼすTMの役割を検討し、白血球インテグリンLFA-1とMac-1は血管内皮上でICAM-1だけでなくTMにも結合することを明らかにしてきた。また、TMをシャーレに固相し、THP-1、Jurkat細胞およびPBMCを共培養することで遊走を観察する系を検討してきた。これらの知見から我々は血液中に存在するTM(もしくは治療薬のsoluble TM)が白血球と血管内皮細胞との結合を抑制する可能性があると考え、以下の点を検討し、明らかにした。 1)血管内皮細胞(HUVEC)を固相化し、健常人から取り出したPBMCのインテグリンを活性化して生理的なシェアストレス下で結合実験を行い、インテグリン活性依存的にPBMCと血管内皮細胞が結合する系を確立した。2)血管内皮細胞と白血球の結合が各種インテグリン抗体とrhsTMにより抑制される可能性について検討した。 血液中にはsoluble TM以外に細胞外小胞(細胞からshedding により放出される小胞)表面上のTMが存在する。 3)炎症時に血管内皮細胞上に発現するTMがTNFα(炎症刺激)により発現量が減少することを蛍光顕微鏡で確認した。4)細胞外小胞上のTMの発現量について検討し、健常人とSIRS患者(敗血症、外傷など)で比較して差があることをフローサイトメトリーで確認した。5)さらにEV上のインテグリン発現量に関しても検討し、敗血症では細胞外小胞上の白血球インテグリンはbeta2 integrinが有意に増加していて、いくつかの臨床パラメーターと相関していることを証明した。以上からTMが様々な形で白血球と血管内皮細胞との接着に関与している可能性を明らかにした。今後はこれらの知見をもとにsoluble TMと細胞外小胞TMのさらに詳しい抗炎症作用のメカニズムについて明らかにしていく。
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