研究実績の概要 |
Myeloid-derived suppressor cells(MDSC)は外傷や担癌状態で、病巣部位・血液中に増加する。また、ミクログリアは脳内の免疫担当細胞であり、壊死組織を貪食して脳内の恒常性を保つだけでなく、傷ついた神経に対し修復を行う等、頭部外傷後に多くの役割を担う。本研究では、頭部外傷後のMDSCとミクログリアの相互反応をin vivoで証明することを目的とした。 まず、損傷部への血球系細胞の浸潤を評価するため、経日的に抗Gr-1抗体と抗CD11b抗体を用いてフローサイトメトリ法を行い、損傷脳へのMDSC浸潤を定量評価した。損傷脳へ浸潤するMDSCの割合は損傷後1日目をピークにし、後は漸減していった。また損傷1日目におけるMDSCの脳内の局在を調べるため、抗Gr-1抗体を用いて免疫染色をおこなった。血中から損傷部へと浸潤するMDSCを阻害するために、損傷の3時間後、1~4日目にRB6-8C5 40mg/kg を腹腔内投与したものを抗体群とし、対照群にはアイソタイプコントロール(IgG2b,κ)を投与した。損傷後 1週間・6週間目におけるミクログリア活性をTSPO-PETを用いてin vivo imagingで評価した。血中のMDSCを免疫除去により、損傷1週目における抗Gr-1抗体投与群の大脳皮質の損傷部位と視床部ともにTSPO-PET uptakeは増加した。一方、損傷6週間では視床のup takeに優位差はなく、MDSCは主に頭部外傷急性期におけるミクログリアの活性化を抑制していると考えられた。 以上により、頭部外傷後の脳内免疫の新しい機序を証明できた。
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