研究課題/領域番号 |
16K20390
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梅村 穣 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20743561)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 集中治療医学 |
研究実績の概要 |
重症熱中症では高体温時に中枢神経系異常をきたすことで、抗炎症性の神経回路や体温調節中枢が破綻する結果、中枢性に血管内皮障害/全身性炎症、多臓器障害が進行することが知られている。我々は、既に確立したモデルである重症熱中症ラットモデル(7日間の死亡率70%)を用いて骨髄由来単核細胞移植療法の有効性を検証した。暑熱暴露解除直後に、健常ラットより採取した骨髄由来単核細胞を尾静注移植したラットでは、投与しなかったラットと比べて、7日間の死亡率が有意に低かった(12.5%対58.3%、p<0.01)。また暑熱暴露現場~搬送時における投与を想定して、暑熱暴露解除15分前、暑熱暴露解除直後に分けて7日間率を比較したが、この2群では死亡率の有意差は認めなかった。暑熱暴露解除から24時間後の血中のTNF-α、IL-1、IL-6などの炎症性サイトカインの値はいずれも骨髄由来単核細胞投与群で有意に低かった。以上の結果より骨髄由来単核細胞移植は、熱中症急性期に産生される炎症性サイトカインによる過剰な生体反応が抑制し、生存率の改善させる効果があることが示唆された。骨髄由来単核細胞移植による熱中症の炎症制御機序をより詳細に評価し、将来的な臨床応用につなげることで、積極的冷却による体温管理、大量輸液による循環維持、人工呼吸器による呼吸管理といった対症療法の域を出なかった熱中症治療に革新的な変化をもたらすことが期待される
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標としていた7日間死亡率70%の熱中症ラットモデルの確立、骨髄由来単核球細胞移植技術の確立、細胞移植による生存率や血中の炎症性サイトカインへの影響の評価を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
組織学的評価を行い骨髄由来単核球細胞移植によって、熱中症に起因する脳、肺、心、腎、肝など臓器障害がどのように影響を与えるのかを評価する。また組織中に含まれる細胞死制御因子や酸化ストレスの指標となる因子を定量評価することで、炎症と臓器障害のカスケードに与える影響をより詳細に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部で当初予定していた実験費用と実際費用に差異が生じたため、今年度必要になると予想していた経費の一部を今後の段階で使用することが必要になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
おおむね当初の実験計画の方向に沿って今後の研究を進めるが、今年度までの結果を踏まえて細かい点で作業の進め方に関して変更を加えた形で実験を行っていく。
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