研究実績の概要 |
1)昨年度敗血症患者から検出された4つのフェノール酸(Benzoic acid、2-Phenylpropionic acid、3-Phenylpropionic acid、3-Phenyllactic acid、Hydroxyphenyl acetic acid、4-Hydroxyphenyllactic acid)について敗血症患者と健常者患者で比較検討した。また各フェノール酸濃度と敗血症患者の臨床病態(ICU重症度スコア、ICU滞在期間、院内死亡率)との相関を検討した。2)C57/B6Lマウスを用いて、敗血症モデルを24時間後にsacrificeし、血液を採取し、ガスクロマトグラフィー質量分析計にてフェノール類を測定、各フェノール酸の血中濃度をShamマウスと比較検討する。結果:1)健常者の血液検体と比較したところ4-HPAが有意に上昇していた(p<0.01)。またBA・3-PPAはそれぞれICU滞在期間と有意に相関していた(BA;相関係数 0.73, p<0.05, 3-PPA;相関係数 0.83, p<0.01 )。さらに生存群と比較して、死亡群の4PHAは有意に上昇していた(相関係数0.64,p<0.05)。2)マウス敗血症モデルの血清からは、フェノール酸は検出されず、Shamマウスと比較しても有意な上昇は認められなかった。 考察:敗血症患者の血液検体から正常人と比べ有意に巧緻なフェノール類が検出されたが、敗血症マウスを用いた実験では同様の所見は得ることができなかった。ICU滞在期間やICU重症度スコアと相関を認めるフェノール酸はまだ同定できていない。今回の敗血症の検討を行うにはまだ検体が少なく、今後さらに症例数を増やし患者背景や病態等との比較・検討を行うとともに、現場で活用できるフェノール測定キットの測定に向けた基礎研究を展開していく予定である。
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